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海岸防災林に再び緑 水はけ・生態系…懸念もなお 仙台湾岸、植樹3年

 
 津波で失われた海岸防災林の再生事業が、大がかりに進められている。盛り土された長大な人工台地の上にクロマツの苗を植え始めて、3年が過ぎた。生育はおおむね順調で、高さ1~2メートルの緑の「林」になりつつある。
 名取市海岸部で、ボランティアによる植樹と松林の見学会があった。同市では、公益財団法人オイスカ(本部・東京)が10億円を目標に資金を集め、地元の農家や林業者、ボランティアの協力も得て、延長5キロ、約100ヘクタールの再生にあたってきた。
 林野庁が造成した幅200~250メートル、高さ2~3メートルの盛り土に、2014年春から植林を開始。区域の約8割で、計25万本の苗を植え終わった。最初に植えた16ヘクタールでは、20センチほどだった苗が最大2メートル20に。緑が回復した海岸地域には、キツネ、タヌキ、キジなど、被災していなくなった生き物も戻ってきた。
 一方、現地を見た太田猛彦東大名誉教授(森林環境学)は、課題も指摘する。海岸にはなかった山砂を運びこんだため、水はけが悪い。雨が降るとあちこちに水たまりができ、今後深く根を張れない恐れがある。また海側に完成した7・2メートルのコンクリート防潮堤に風がさえぎられ、苗が低い間は成長が早かった面もあるという。
 オイスカによると、20年には植樹を完了。排水対策や草刈り、除伐などの管理を続け、20~30年後には高さ20メートルほどの松林がよみがえる。
 20日の植樹には市民や支援企業など530人が集まり、1万本を植えた。約100人が参加した名取北高校の2年、阿部ひよりさん(16)は「震災では松林のおかげで津波が弱められたと教わった。自分が植えたクロマツが次の大地震で誰かを助けられるなら、地元貢献にもなる」と話した。

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