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間伐材売買、地域通貨で潤う地元 「木の駅プロジェクト」各地で導入進む

 間伐材を活用し、中山間地の活性化に生かそうという「木の駅プロジェクト」の導入が東北地方でも進んでいる。山林の整備に加え、間伐材の売買に地域通貨を使うことで地元商店街も潤そうという仕組みだ。山林所有者(山主)にとどまらず、商店主からも歓迎されている。
 秋田県境と接する青森県新郷村は昨年6月にプロジェクトを立ち上げた。村と山主、森林組合の3者で「木の駅プロジェクト実行委員会」を設立。間伐材を1立方メートル当たり4千円で森林組合が買い取り、山主には村が補助金2千円を上乗せして6千円を地域通貨「郷やま券」(額面1枚500円)で支払う。
 初年度の出荷量は目標(300立方メートル)の約1・8倍にあたる計537立方メートルにのぼり、郷やま券は6485枚(324万2500円分)が発券された。このうち3月末までに6454枚(322万7千円分)が村内の商店から事務局に回収されている。
 山主の一人で実行委の立ち上げに関わった川代光納さん(59)は「見向きもされなかった間伐材が商品になりありがたい。山主の励みになる」と話す。村には商店からも「続けてほしい」という声が寄せられているといい、須藤良美村長は「山は村の財産。山で地域経済が潤えば、村も元気を取り戻す」と語る。
 新郷村が行政主導であるのに対し、事業開始から今年で4年目に入った山形県白鷹町の「しらたか木の駅」は、障害児支援に取り組むNPO法人が母体となっている。山主と商店主計50人で実行委員会を運営し、県内のバイオマス発電所に間伐材を販売。山主の一人でもあるNPO代表の小林真さん(49)は「補助金頼みではいつか限界がくると思い、行政との連携は頭になかった」と振り返る。
 出荷量は1年目が約90立方メートル、2年目200立方メートル、3年目700立方メートルと増え続け、3年目には別のバイオマス発電所と契約を結んで買い取り価格が上がり、黒字を確保した。小林さんは「山主たちは生き生きし始め、商店主も新規のお客が増えたと反応はいい。本格的に事業化を目指したい」と話す。
 「由利本荘木のプール」を運営する秋田県由利本荘市では昨年11月、「木の駅東北ブロック会議」が開かれ、導入を検討している団体を含め東北4県から6団体約30人が参加した。事務局を務めた同市子育て支援課副参事の土田房貴さん(44)は「実践報告や情報交換を通じて課題解決への手がかりを得た」と話した。
 農林水産省出身でプロジェクトを発案、提唱しているNPO地域再生機構・木の駅アドバイザーの丹羽健司さん(63)によると、実践団体は全国で約百団体にのぼるという。丹羽さんは「山は様々な恵をもたらしてくれる宝物。実はぜいたくですてきな暮らしがあるという山里の魅力を改めて見つけ出し始めている」と期待を寄せる。

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