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高山植物再生へ、ハイマツ枝払い アポイ岳で環境科学委 /北海道

 様似町のアポイ岳で、国の特別天然記念物に指定されている高山植物群落の再生を目指してハイマツの枝払い試験が始まった。特別天然記念物指定区域内では初めてで、今後は高山植物の再生状況などを追跡調査し、効果を検証する。
 植物研究者らによる「アポイ環境科学委員会」(委員長=佐藤謙・北海学園大名誉教授)が、地元の「アポイ岳ファンクラブ」のメンバーらの協力を得て、17日から始めた。約20人が早朝から山に入り、7合目から9合目の登山道沿いに設定した7カ所の試験区で、ハイマツの枝を景観に配慮しながら切った。ハイマツの年輪や、枝が1年に伸びた長さも調べた。
 アポイ岳は標高810・2メートルながら、冷たい海霧と特異な地質が相まり、ヒダカソウなど多くの固有種を含む高山植物が生育している。1952年に特別天然記念物に指定されたが、盗掘やハイマツ低木林の拡大などによって高山植物が激減。幼虫が高山植物を食べて育つ国天然記念物のチョウ「ヒメチャマダラセセリ」も絶滅の危機にある。
 NPO法人「日本チョウ類保全協会」は2013年、ヒメチャマダラセセリの回復を目指して特別天然記念物指定区域外でハイマツの伐採試験を実施し、一定の成果を上げている。この先行事例も踏まえ、科学委は昨年度から文化庁の補助(天然記念物再生事業)を受け、高山植物の生育を妨げるハイマツの伐採手法や場所を設定し、特別天然記念物指定区域内で初の枝払いが実現した。
 6月には「旧幌満(ほろまん)お花畑」で減少が著しいヒダカソウの再生を目指す枝払い試験が計画されている。佐藤委員長は「さまざまな知見を総合的に把握し、衰退した高山植生の回復、希少種の保全・再生に取り組みたい」と話した。

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