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密猟・違法伐採、世界遺産で横行 絶滅危惧種すみか、半数近く WWF報告書

 タンザニアのセレンゲティ国立公園やエクアドルのガラパゴス諸島など、数多くの貴重な動植物が確認されている世界遺産の半分近くで、密猟や違法伐採が横行し、生態系が脅かされているとする報告書を世界自然保護基金(WWF)がまとめた。国際取引を禁じるワシントン条約の対象種であるゾウやトラ、サメなども数が激減しており、WWFは保護と監視を強めるよう呼びかけている。
 WWFの研究チームは、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が絶滅危惧種がすむ生物多様性上の重要地点という基準で選んだ世界自然遺産と複合遺産の計147カ所を調査した。そのうち少なくとも65カ所で生物の違法な採取が確認された。
 トラやゾウ、サイなどの密猟は少なくとも42カ所、ローズウッド(紫檀〈したん〉)や黒檀(こくたん)などの違法伐採は26カ所、サメやエイ、マグロ、ウミガメなどの密漁は18カ所で行われていた。日本で唯一調査対象になった知床では、違法な採取は確認されなかったという。
 報告書によると、違法な取引額は全世界で年150億~200億ドル。背景には、象牙など希少な野生動植物から作った製品を買い求める人が後を絶たないことがあると指摘している。一方、密猟や違法伐採が地域へ与える打撃は大きく、マダガスカルでは紫檀の違法取引で2年間に最大2億ドルの損失が出たという。
 また、世界遺産などでは野生生物を守るためにレンジャーが活動しているが、2009~16年に少なくとも595人が殺害されたという。

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