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木登りカタツムリはなぜ木に登るかを明らかに

木の上は風通しがよいため、湿気の多い場所を好むカタツムリの生息には適していないように思われるが、なぜ樹上性カタツムリがいるのか適応的意義を明らかにするため、筑波大学と北海道大学の研究グループは樹上性のサッポロマイマイを対象に研究した。

 

サッポロマイマイは、冬季は林床の落葉の中で冬眠し、5 月中旬になると一斉に樹上に移動し、10 月中旬ごろ越冬のため再び地上に降りてくることがわかった。春の登り始めの時期は、カタツムリの捕食者である地表性のオサムシ類が活動を開始する少し前で、降りてくる時期はオサムシ類がほぼ活動を停止する時期と一致していた。サッポロマイマイを樹上と地表に固定し、生存率を比較する野外操作実験も行い、木から降りてくる時期は夏に比べて捕食者に対して安全であることが明らかとなった。また、木の上でサッポロマイマイが生きていくための食物を調べると、地衣類やコケ類を利用していることがわかった。以上の結果から、樹上性カタツムリであるサッポロマイマイは、地表にいる様々な捕食者を回避し、生存率を高めるために木に登り、地衣・コケ類が樹上にあることから生存の助けとなっていると考えられた。

 

ただし最近では、外来生物のアライグマが侵入し、サッポロマイマイを捕食していることがわかってきた。長い時間をかけて樹上生活性を進化させてきた生物にとって、こうした移入種は大きな脅威となっている。またサッポロマイマイは原生的な森林環境を好むが、森林の開発や人工林化によりそうした林は減少しつつある。研究グループは近年の森林環境の変化が、樹上の生物相にどのような影響を与えているかについて、調査を続けている。

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