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断片化した熱帯雨林でフタバガキ樹木の雑種を確認

森林総研は、高知大学やシンガポール国立南洋理工大学などと共同で、シンガポールにほぼ唯一残された貴重な熱帯雨林(ブキティマ自然保護区)に優占するフタバガキ科数種で雑種化が起こっていることを発見し、その実態を解明した。フタバガキ科樹木は、東南アジア熱帯林の優占種として森林全体の炭素固定を支える上で重要だ。ブキティマ自然保護区の熱帯雨林は150年以上もの長期間、小面積で孤立化した状態で保全されてきた。この森林のフタバガキ科稚樹を対象に雑種の割合や生存率、定着環境を調べたところ、稚樹段階での雑種の割合は非常に高く、母樹が100本以下まで減少した種では4割以上が、母樹が1000本程度残存する種も2割近くが雑種だった。雑種の生存率や成長速度は、両親種の稚樹と比べても差はなかったが、明るく乾燥した環境に多く生育していたことから、今後気候変動の影響で林内がより乾燥すれば、さらに定着が進むことが考えられた。また、雑種の成木の種子には発芽能力があり、親種との戻し交配も起こっていることから、将来的に純粋な親種が消失してしまう危険性の存在も考えられた。この成果はPlant Ecology and Diversity誌で公開された。

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