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浮力で閉じる防潮堤 津波時、電源・人の手いらず 国内最大、阿南に門7基完成

 浮力を使って起き上がる防潮堤の門7基が、阿南市豊益町の桑野川河口部に完成した。最大のものは横幅が20メートルもあり、国内最大だという。普段は王子製紙富岡工場の資材運搬路として開いているが、津波や高潮に襲われた時には電源や人の操作がいらず、自動的に閉じる。
 那賀川河川事務所や最大の門を施工した日立造船によると、門の高さは3メートル、横幅は12~20メートル。地盤を含めると高さは5・1メートルとなり、県の想定による付近の津波高約4メートルを上回る。事業費は最大のもので約2億5千万円。7基で計約11億円という。
 ポリウレタンが詰められた厚さ約30センチの「フラップ板」が普段は路面と同じ高さに倒れており、岸壁内側にある製紙工場の資材を運ぶ大型車両も通行できる。津波や高潮の発生時はフラップ板が浮力を受け、門の左右に設置した重りとのバランスを取りながら立ち上がり、防潮堤を閉じる。門の開閉を扱う操作員の安全が確保され、電源喪失の心配もない。
 無動力の門は防潮堤の切れ目にある「陸閘(りっこう)」の一種で、東日本大震災の際、手動で閉めようとした消防団員らが犠牲になったのを機に開発が進んだ。現在、施工中のものを含めて全国で約80基ある。県内では鳴門市や美波町にも設置されている。
 27日にあった関係者らによる現地見学会ではフラップ板の下に水を流し込み、15センチ程度上げた後、維持管理のために設けられた電動装置を使い、3メートルの高さまで立ち上げた。野本粋浩・那賀川河川事務所長は「メンテナンスも安価で済む。どんどん色々な所で使われるようになれば」と期待を込めた。

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