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花粉を運ぶ動物を守るための政策を提言

森林総合研究所は、英国イーストアングリア大学などと共同で、送粉者を守り、送粉サービスを維持するために必要な農林業および環境政策を提言し、Science誌で公開した。世界各地でハチなどの送粉者が急激に減少しており、地球規模での政策転換が必要とされている。12月にメキシコで開かれる生物多様性条約第13回締約国会議(COP13)における議論で、活用されることが期待されている。提言の要点は次の通り。

  1. 農薬の使用基準の向上

送粉者に対する農薬のリスク評価を行い、その結果に基づいて農薬の使用基準を制定すること、すでに制定されている場合には規制を強化することが必要。

  1. 総合的病害虫管理(IPM)の推進

病害虫の防除において、経済性を考慮しつつ、農薬だけでなく利用可能な様々な技術を、適切な手段で総合的に講じる総合的病害虫管理(IPM)が必要。

  1. 遺伝子組み換え植物のリスク評価

送粉者に対する遺伝子組み換え植物のリスク評価において、遺伝子組み換え植物を栽培することによる間接的な影響、および亜致死(死に至らしめる手前)的な影響を考慮することが必要。

  1. 人工飼育送粉者の移動の規制

マルハナバチなどの人工飼育種が、本来の生息地外で利用された時、生息地外の生態系に悪影響を与える場合があるため、人工飼育種の生息地外利用に注意することが必要。

  1. 送粉者を守る農林業生産者を助けるための補償

送粉者を守るために、農薬の代わりに天敵を利用した害虫防除を行った場合、生産能力が低下することがあり、こうした場合の農林業生産者への補償が必要。

  1. 農業における送粉サービスの重要性の認識

多くの農作物の種子や果実の生産は、送粉サービスに依存していることを認識することが必要。

  1. 多様な生産システムのサポート

大面積に単一の農林産物を生産するような画一的な栽培方法だけではなく、多様な生産システムが必要。

  1. 送粉者の生息地の保全と再生

森林等の自然植生は、送粉者に食料や生息場所を提供する。そのため送粉サービスを維持するには、自然植生を農地や都市の周辺に確保し、送粉者の生息場所となるように管理する必要がある。

  1. 送粉者と送粉サービスのモニタリング

送粉者や送粉サービスに関するデータが不足している国、地域では、長期的なモニタリングシステムの開発が必要。

  1. 研究資金の提供

7と8の取り組みやモニタリング調査には資金が必要。

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