ニュースピックアップ
ニュースピックアップ

分布が狭い植物ほど、自然保護区では守れない!

国立公園などの自然保護区(以降、保護区)は、野生生物を人間活動による絶滅から守る上での砦であり、世界中で20万カ所以上が設置されている。生物多様性条約の愛知目標11では、生物多様性保全のために「2020年までに陸域の17%を効果的に管理された保護区とすること」が定められている。ただ、従来の保護区は、景観の美しさや人間活動を阻害しないことを基準に決定され、守るべき生物の分布は十分に考慮されてこなかった。そこで東京農工大学や国立環境研究所、日本自然保護協会などの研究チームは、分布の狭い種が、保護区に含まれにくいために局所的に絶滅しやすく、その結果、ますます絶滅リスクが上がるという「絶滅への悪循環」が起こる可能性に注目。国内の状況を検討するため、植物レッドデータブック編集のための調査データのうち1572種について、1994-95年と2010-11年の2期間に収集されたデータを用いた統計分析をした。その結果、分布が狭い植物は国立公園の特別保護地区などの保護区と分布域が重なる割合が低いことが確認できた。少なくとも250種の分布が保護区域と全く重なっていなかった。さらに、生物の分布を考えずに保護区を繰り返し新設すると、分布の広い種は保護区が新設されることの効果で種が絶滅するリスクは下がるものの、分布域の狭い種では絶滅するリスクが上がり続ける「絶滅への悪循環」に陥ることが確かめられた。従って、保護区の新設・拡大により生物の絶滅を抑えようとする場合には、保全すべき生物の分布を考慮した計画的な保護区設定が不可欠であることが示された。

PAGE TOP