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現耐震基準「有効」 熊本地震「倒壊は防げた」 国の専門家委

熊本地震の建物被害を分析し、耐震基準の妥当性を検討する国の専門家委員会は12日、2000年に強化された現在の新耐震基準であれば、今回の地震でも「倒壊の防止に有効だった」と結論づけた。これにより、国土交通省は基準の見直しを見送る方針だ。

熊本地震では当初、比較的新しそうな木造住宅の倒壊が指摘された。このため国交省や日本建築学会は、震度7の揺れが連続した熊本県益城町中心部の全ての木造建物1955棟の被害状況を精査。専門家委員会は建築時期と被害の関係に着目し、耐震基準の妥当性について検討を加えた。

同委がまとめた報告書案によると、現在の耐震基準のもとで00年6月以降に建てられた323棟では、倒壊したのは7棟(2・2%)だった。同学会の現地調査では当初、全壊51棟とされていたが、その後の調査で、最大17棟と判明。さらに、建築年代や建物の用途などを精査した結果、倒壊は7棟と認定した。7棟のうち3棟は柱の固定が不十分、1棟は敷地の崩壊が原因と推定された。残り3棟は明確な原因は特定出来なかったが、局所的な大きな地震動が影響した可能性が考えられる「例外」で、現在の耐震基準は有効と結論づけた。

一方、規定強化前の1981年6月~00年5月に建てられた862棟では、75棟(8・7%)が倒壊。柱の固定部分が確認できた69棟全てで、00年に強化された規定は満たしていなかった。国交省幹部は「規定を満たせば倒壊を免れた可能性が高い」と指摘する。

81年5月以前に旧耐震基準のもとで建てられた770棟では、215棟(27・9%)が倒壊。委員会は、国交省に耐震化を進めるよう求めた。また、耐震基準は建物が倒壊しない「最低限の基準」だとし、災害時に拠点となる役所や学校などは、被災後も維持できる耐震性を備えるよう、検討を求めた。

 

■「地盤の強弱など、伝える仕組みを」

日本建築学会で熊本地震の建物被害調査を取りまとめた福岡大の高山峯夫教授は「(被害の大きかった益城町では)断層の影響、地盤の変位などの要因が重なって被害が大きくなった。最低基準として今の耐震基準は妥当だと考えるが、家を建てる人に、地盤の強弱などの条件によってどのような性能の家が適切かという情報を提供できる仕組みが必要だ」と話している。

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