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微細プラスチック、魚から 吸着の汚染、体内蓄積 海洋生態系に脅威

 大きさが5ミリ以下の「マイクロプラスチック」による海の汚染が懸念されている。5月に富山市で開かれた主要7カ国(G7)環境相会合でも「海洋生態系にとっての脅威」との認識で各国が一致した。魚など生物の体内への取り込みが報告されており、早急な対策が求められる。
 米ジョージア大などの推計では、プラスチックごみの海への流出量は世界で年間480万~1270万トン。太陽の熱や紫外線、波の力などで細かく砕ける。こうした「マイクロプラスチック」は長期間にわたって海の中を漂う。
 東京農工大の研究チームは昨年8月、東京湾で食用魚のカタクチイワシを捕獲し、消化管の中身を調べた。64匹のうち49匹から、計150個のマイクロプラスチックが見つかった。大半はポリエチレンやポリプロピレンの破片で、大きさは0・1~1ミリのものが多かった。エサのプランクトンと一緒に体内に取り込まれたとみられる。
 東京海洋大の内田圭一助教(海洋環境学)は「海の表層でプランクトンをこし取って食べる他の魚種でも、同様の現象が起きている可能性がある」と指摘する。
 海外では、ハダカイワシ類などのほか、カキやヨーロッパイガイからもマイクロプラスチックが見つかり、海洋生態系への影響が懸念されている。東京農工大の高田秀重教授(環境化学)は「私たちに身近な東京湾でも魚に取り込まれていることが分かり、ショックを受けた」と話す。
 マイクロプラスチックは小さくて回収が困難なうえ、有機塩素系の農薬やポリ塩化ビフェニール(PCB)など、海水に含まれる汚染物質を吸着する。海鳥や魚がエサと一緒にマイクロプラスチックを体内に取り込むと、吸着していた汚染物質が体内に移行・蓄積することが、国内外の研究で確認されている。
 東京農工大の研究チームは、今回調査したカタクチイワシについて、もし人が食べてもプラスチックは体外に排泄(はいせつ)されるため、現時点では健康への悪影響はないとみている。ただ、海のプラスチックごみが今後さらに増えれば、汚染物質が人体に移行・蓄積する機会が増える恐れがあると指摘している。

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