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春なのに姿消す生き物 気象庁の観測、休止相次ぐ

 5日は暦の上の「啓蟄(けいちつ)」で、冬ごもりしていた虫たちが動き出す時期とされる。気象庁は1953年から、季節の移り変わりを動植物の様子でみる「生物季節観測」を続けているが、温暖化や都市化の影響で身近な生き物が見られなくなっている。
 気象庁が全国規模で観測の対象としてきたのは、トノサマガエル、チョウや鳥といった生物が11種、サクラやタンポポなどの植物が12種類。生物は、気象台職員が初めて姿を見た日を「初見(しょけん)日」、初めて鳴き声を聞いた日を「初鳴(しょめい)日」、植物は花の「開花日」などを記録に残す。ところが近年、観測が休止に追い込まれる事例が相次いでいる。
 千葉県銚子市の銚子地方気象台では、トノサマガエルが2011年以降は見られない。これまで毎年のように確認されたが、5年間も見られないのは初めて。かつて、東京都と神奈川県を除く45道府県で確認された。しかし、15年春に観測を実施したのは22県で、姿が確認できたのは栃木や三重など5県のみ。25都道府県はすでに観測をやめている。
 ホタルやヒグラシも休止に追い込まれている。ホタルは14都道府県で対象から外した。44都道府県で記録があるヒグラシも、現在は37都府県しか観測を続けていない。
 東京・大手町の東京管区気象台では11年、6種の観測をやめ、ウグイス、ツバメ、シオカラトンボ、アブラゼミ、ヒグラシの5種類に絞った。ただ「春告鳥(はるつげどり)」とも呼ばれるウグイスの鳴き声は00年を最後に確認できない。地方都市でも変化が見られ、甲府地方気象台のヒグラシの初鳴は13年が最後だ。
 生物の観測エリアは気象台の敷地内か、半径5キロ以内にある雑木林や水辺などで、職員が定期的に観測しにいく。
 敬愛大学国際学部非常勤講師の松本太さん(環境学)は「地球温暖化が進んでいるうえ、気象台がある都市部では開発による環境変化やヒートアイランド現象で、生物が生息しにくい環境になっている」と分析している。

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