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市場価値、最大66兆円 花粉運ぶハチやチョウの働き 国連が報告書

 昆虫や動物が花粉を運ぶことなどで市場にもたらす価値は世界で年間2350億~5770億ドル(約27兆~66兆円)に上ると、国連の科学者組織が発表した。ハチの減少が報告されている上、絶滅の危機にある種も多く、花粉を運ぶ役割が失われることで、将来の食料生産や生態系への影響を示唆している。
 報告書を公表したのは国連の呼びかけで2012年に世界の科学者が集まってつくった「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットホーム」(IPBES)。温暖化対策の土台となる報告書を定期的にまとめている「国連気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)のような役割を期待されており、「生物多様性版IPCC」とも呼ばれる。報告書によると、花粉を媒介するのは2万種以上のハチのほか、チョウ、カブトムシなどの昆虫、鳥やコウモリなど。コーヒーやアーモンド、果物など、世界の作物生産量の5~8%がこれらに依存している。生産量は過去50年で300%増加しているという。
 日本国内でも同様の推計を農業環境技術研究所(茨城県つくば市)がまとめた。昆虫が国内の農業にもたらす利益は、年間約4700億円。畜産業を除く農業産出額の約8%に相当し、うち7割は野生の虫が稼いでいた。
 額が大きかったのはリンゴ(911億円)やメロン(677億円)、スイカ(513億円)、ナシ(400億円)など。セイヨウミツバチなど人為的に放たれる昆虫以外の野生種に頼っている分を推計すると、リンゴとナシでは9割前後を占め、全体の合計は約3300億円になった。
 農環研の小沼明弘主任研究員は「野生生物の貢献がかなり大きく、継続的な実態の研究が必要だ」と指摘している。

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