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クマ被害が過去最悪173人 ブナ凶作、生息域拡大

 全国でクマによる被害が相次いでいる。朝日新聞の集計では、今年に入って10月29日までの人身被害は少なくとも計173人。統計がある2006年以降で過去最多となっている。今年は東北地方を中心にブナなどのドングリが凶作で、環境省は11月も被害が続くおそれがあるとして注意を呼びかけている。

 各都道府県の発表情報などから集計したところ、被害の最多は秋田の59人。岩手41人、福島13人、青森11人と続き、18道府県で被害が出ている。死者も岩手で2人、北海道、富山、長野で各1人。これまでの人身被害の最多は20年の158人だった。

 被害が増えた理由について、環境省はブナなどの堅果が凶作で、えさを求めてクマが人里に出やすくなっていると分析する。東北森林管理局の調査では、青森、岩手、宮城、秋田、山形の東北5県全てで「大凶作」と判定された。堅果の豊凶は2~3年の周期性があるとされる。

 クマは12月ごろから翌年の3~5月まで冬眠する。この間を過ごすために秋に脂肪をたくわえる必要があり、えさを探して動き回る。体格も夏より一回りも大きくなる。

「人里でえさを食べる成功体験ができた」
 東京農工大の小池伸介教授(生態学)は「堅果の凶作が引き金」としつつ、背景に「クマが人里に出てきやすい環境」が生まれているとも指摘する。人口減で耕作放棄地が増えたり、やぶ払いが行き届かず、柿や栗の木なども放置されたり。「クマにとってはどこまでが森で、どこからが人里か分からないまま、えさを食べる成功体験ができてしまったのではないか」という。

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