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海と森再生にカキいかだを美杉ヒノキ 鳥羽の業者と林業家がタグ

豊かな森林は豊かな海を育む――。そんな山と海の共生を形にしようと、津市美杉町の若手林業家と三重県鳥羽市浦村町のカキ養殖業者が今年から手を組んだ。養殖用のカキいかだの資材に、間伐材など美杉産のヒノキを使う試みだ。

養殖カキの一大産地で、県内生産量の3分の2を占める浦村町。4月までの収穫期を終え、カキいかだの新調や補修作業が進む。

5月下旬のある日、美杉町の林業家荻野隼(しゅん)さん(25)が4トントラックに長さ18尺(約5・5メートル)のヒノキ約150本を載せ、カキ養殖業者4カ所に届けた。林業をしていると聞いた年配の養殖業者から「もっとおっちゃんかと思った」と声をかけられる。荻野さんが「(若いので)あと40年は木を出せますよ」と答えると、養殖の作業場が笑いに包まれた。

林業を志し、6年前にこの世界に飛び込んだ。カキいかだ用のヒノキの伐採や皮むきを専門にする「荻野林業」を4月に美杉町で起業した。

美杉町は県内有数の木材産地だが、国産材の価格や需要の低迷で、50~60年前に植林されたまま放置されている山林も多いという。「間伐材や、管理されず太く育たなかったヒノキの利用にカキいかだは最適。建材以外にも用途を探すことが美杉の林業の発展と山林の再生につながる」

そんな美杉産ヒノキの利用を浦村町のカキ養殖業者に呼びかけたのは、「丸善水産」3代目の中村善紀取締役(41)だった。

中村さんによると、尾鷲産などのいかだ用のヒノキは、カキ産地の広島、岡山両県からの需要で価格が毎年上がっていた。一方で近年、気候変動による水温上昇の影響か、カキの大量死や成長の遅れが問題となっており、中村さんの会社でも生産量が10年前の3分の1に減っているという。

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