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有機給食の指南本 子どもと生産者につながり 関心向上、安定生産へ

 地元でとれた有機野菜や有機米を学校給食で活用する「有機給食」の動きが、広がりつつある。各地の取り組みや導入のノウハウをまとめた本を、秋田県立大の谷口吉光教授と専修大の靍(つる)理恵子教授が4月、出版した。谷口教授は「有機給食は地域を元気にする」と意義を語る。

 この本は「有機給食スタートブック」(農山漁村文化協会発行、204ページ、税込み1980円)。両教授が編著者となっている。

 農薬を使わない有機栽培や、減農薬の農産物を給食で子どもたちが食べることで、安全で豊かな食事がもたらされるとして、導入する自治体が増えつつある。

 本ではまず、先行する全国10カ所の取り組みを紹介している。たとえば、開始から約40年になる愛媛県今治市では、給食センター方式から自校式給食に切り替える運動を通じて有機給食が導入された。現在、コメは減農薬がほぼ100%、野菜は有機栽培を含めて約5割が地元産だ。「食材の説明や調理場見学は、地産地消への生徒の理解・意識の向上に貢献している」と著作は指摘している。

 都市部で普及を進めた東京都武蔵野市では、市が出資した振興財団が学校給食事業を運営する。コメは東北や北陸の農家から有機栽培や無農薬栽培のものを優先して購入。農地が少ないなかで地場産野菜を給食で使うために、地元JAと財団が連携し、地元農家の野菜をJAが調理場に運ぶ仕組みを整えたことなどを紹介している。

 こうした事例を踏まえて、導入に向けたポイントをQ&A形式で助言しているのも特徴だ。学校、保護者、行政、生産者、農産物輸送など立場が異なる関係者が集まって「チーム」をつくる必要がある、と谷口教授は指摘。①ジャンルを越えた人々の思いを集めて有機給食を実現する流れをつくる②実際に有機農産物を給食に供給する仕組みをつくる――という二つの目標に向けて話し合っていくよう呼びかけている。

 日本有機農業学会の会長でもある谷口教授は「子どもたちと有機農業の生産者が、給食を通じてつながることで、食の安全に加え、地域の有機農業の安定生産につながる。農産物への関心をもってもらえば食育にも役立つ」と語る。(松村北斗)

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