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変わる国内最大規模の京葉臨海コンビナート カギは「脱炭素」

国内最大規模の「京葉臨海コンビナート」(千葉県)の立地企業が、二酸化炭素(CO2)の排出削減の取り組みを加速させている。化石資源から様々な製品を量産してきたのを、植物由来の油や使用済みの廃プラスチックなどから造る。技術開発のための設備がコンビナート内で次々と計画されている。県も昨年、各社と協議会を設立して支援に乗り出した。主な取り組みを紹介する。(三嶋伸一)

京葉臨海コンビナートはこれまで、成田空港などへ航空燃料を供給してきた。その燃料を石油由来でないものに転換して、航空機が出す二酸化炭素量を減らす試みが始まっている。

「3年後、ここで年間10万キロリットル規模でSAF(サフ)を製造する新たなプラントが稼働します」。出光興産千葉事業所の藤本倫生部長は、原油タンクに隣接する更地を示した。

SAFとは石油由来ではない航空燃料。原料は大豆や菜種などからつくる食用油の廃油や、サトウキビなどから作るアルコールの一種「バイオエタノール」など。使えば従来の燃料同様に二酸化炭素が出るが、原料の植物が過去に吸収したものと見なされ排出量は実質ゼロとなる。航空機の二酸化炭素削減の切り札として期待されている。

出光の新プラントの原料も海外でつくったバイオエタノール。これを輸入し航空燃料に加工する。現在、国内に国産プラントはなく、出光のようにアルコール類から作る大規模プラントは世界初となるという。

ただ問題は大量に必要なことだ。国土交通省は2030年に、国内航空会社や日本を離着陸する海外航空会社に提供する航空燃料の10%をSAFにする目標を示す。年間約171万キロリットルにのぼる。

出光は2030年には、国内生産規模を年間50万キロリットルに引き上げる予定。コスモ石油(年間30万キロリットル)やエネオス(同40万キロリットル)も製造を予定するが、3社合わせても目標に足りない。国際民間航空機関(ICAO)はさらに高い二酸化炭素削減目標を示していて、SAFの必要量は増える可能性があるという。

原料確保に課題がある。食用にも使われる原料があるためだ。そこで出光はこのほど、食用に使われていないマメ科植物「ポンガミア」の栽培に食品メーカー「J―オイルミルズ」などと当たる計画を発表した。種からとる油を新たなSAFの原料にすべく、豪州で年内の実証栽培を目指す。

価格も課題だ。先行する海外産SAFの製造コストは現在の航空燃料(1リットル当たり100円強)の数倍とも言われる。燃料費増は航空運賃の上昇につながりかねない。出光興産CNX戦略室の田中洋志室長は「製造コストの目標は同100円台」と従来品に近い水準を示す。

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