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「文化財」上高地の保全、地元で 松本市が管理団体めざす

 豊かな自然に恵まれた景勝地、上高地(長野県松本市)の保存・活用を進めようと、松本市が文化財保護法に基づく「管理団体」の指定をめざしている。国の特別名勝・特別天然記念物に指定された上高地の管理を林野庁などに代わって市が担い、文化財として景観再生や動植物の学術調査、施設の維持整備を円滑に進めるねらいがある。

 市アルプスリゾート整備本部によると、上高地は1934(昭和9)年に国立公園に、52年に文化財として国の特別名勝・特別天然記念物に指定された。北アルプスの槍ヶ岳や焼岳などが含まれ、面積は約1万1326ヘクタール。うち99%以上の面積を、林野庁が森林法などに基づいて管理している。

 文化財は原則、文化財保護法に基づき、所有者が管理することになっている。ところが主に森林の管理や利用を担う林野庁が上高地を文化財として保存・活用していくことは事実上難しい。上高地は文化財としての管理者が「実質的に不在」(同本部)な状態だという。

 そこで市が「管理団体」として代わりにこの役割を担うことで、動植物の学術生態調査や、これまで不足してきた文化的な価値の発信などを積極的に進めようとの考えだ。

 市は2023年度中の指定をめざし、念頭に置く大正池の景観再生や管理用道路の整備・維持、野生鳥獣対策などを円滑に行えるようにする。

 文化庁から管理団体に指定された場合、24、25年度に上高地の「保存活用計画」を策定する方針だ。管理団体になれば、文化財保護法に基づき観覧料を徴収することができるようになる。市は上高地に利用者負担制度を導入することで、保存・活用に必要な財源にあてたいという。

 同本部の石田英幸次長は「各省庁間での調整が難しかった事柄が、保存活用計画のもとでスムーズに進められるようになる。市民にとって宝でもあり誇りでもある上高地の文化的な価値を、より積極的に発信していきたい」と話している。

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