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自分で選んだ大黒柱でマイホーム、伐採体験ツアー 「深い愛着湧く」

お神酒で清められた後、チェーンソーで作った切り込みにくさびを打ち込まれてゆっくり倒れていくヒノキ。はらはらして見守るヘルメット姿の家族連れ――。木造家屋を中央で支える「大黒柱」となる木を、住宅建築を注文した施主に立ち木の中から選んでもらう体験ツアーが、愛媛県久万高原町の山林で開かれた。

松山市の工務店「クラス」(矢野陽子代表)が企画した。家づくりの「地産地消」「適材適所」を提唱し、県産材が家の象徴的存在である大黒柱になるまでの過程を知ってもらおうと、2019年から体験ツアーを実施して今回で5回目になる。

「寒暖差がある久万高原町ではいい木が育つ。せっかく地元の木で家を建てるのだから、実際に山でお客さんに選んでいただければ、と思った。お子さんたちの思い出にもなる」と矢野代表。企画に協力した愛媛県森林組合連合会の重松孝典総務部次長は「消費者と山林の接点が減る中、家を建てられる方に木を直接見てもらえる機会は貴重」という。

この日は、西条市で家を新築する瓦職人の丹基徳さん(41)一家5人が参加。クラス社員らの案内で三坂峠近くの山道に分け入り、農林業棟田巧さん(62)が育てた樹齢50~60年のヒノキを、棟田さんの詳しい説明を受けながら吟味した。大黒柱は新居のリビングに立てられ、3面の木目が表に出る設計という。「18センチ角・6メートル長の柱が取れる、節がない木」との条件をクリアする複数の候補を見比べて、1本を選んだ。

「空に向かってまっすぐ伸びている感じがいいなと思った」と丹さん。「工業製品としての木材でなく、生えている所で自ら選んだ木で造った家には、より深く愛着が湧くと思う」。妻の沙季さん(33)も「山に来ることはめったにないので良い体験になった」と笑顔で語った。

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