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ウッドショック直撃、朝来の木質バイオマス発電所が年内に事業停止へ

兵庫県内の林業活性化などを目指して官民が連携して2016年に稼働を始めた朝来生野町の木質バイオマス発電所が、年内で事業を停止する。関西電力や県が発表した。燃料となる木材の価格が、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻の影響で高騰し、調達ができなくなったという。

県のほぼ真ん中に位置する生野工業団地。その一角にある朝来バイオマス発電所では、数台の重機が燃料の木材チップを運び入れていた。だが、広大な保管場所は空きが目立ち、木材は一角に積まれているだけだった。

「採算度外視で木材の買い取り価格を当初から約1・4倍にしたが、それでも高くて手に入らない」。木材の調達を担う県森林組合連合会(県森連)の専務理事、築山佳永さん(64)は嘆く。おおむね2万トンほどは常時確保したいというが、保管場所には6千トンほどしかないという。

木質バイオマス発電は木材を加工したチップを燃やし、タービンを回す発電方法。木は成長するときに光合成で二酸化炭素を吸収するため、燃やしたときの排出量を実質ゼロとみなす再生可能エネルギーだ。

朝来の発電所の特徴は、関電や県などが協力して木材の調達から発電までを担っていることだ。

再生可能エネルギーの普及を進めつつ、間伐材を活用して県内の林業の活性化につなげる――。そんな「兵庫モデル」を目指し、県や県森連、関電などが13年に協定を締結し、3年後に稼働した。県によると、当時は全国初の取り組みだった。

約3・5ヘクタールの敷地内には木材の保管や加工をする工場と発電所があり、それぞれ県森連と関電のグループ会社が運営する。ここに県内の森林から切り出した間伐材の中で、先端や根の近くといった建築などに使えない「未利用材」を運んでくる。

木材は発電所側が固定価格で買い取る仕組みで、県内の林業従事者にとっては木材価格が下落しても安定した収入源になる。県は、森林組合のセーフティーネットになると考えた。

発電所は、一般家庭約1万2千世帯分に相当する電力を発電してきたという。

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