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強度満たす堤防、決壊84カ所 昨秋以降、全被害の6割弱

 昨年10月の台風19号や今年7月の豪雨などで決壊した計147カ所の河川堤防のうち、6割弱の84カ所は必要な強度を満たした「完成堤防」だったことが、国土交通省への取材でわかった。気候変動による記録的な大雨は今後も予想され、国や自治体の担当者は「堤防だけでの治水は難しくなっている」と話す。
 国交省によると、台風19号やその後の大雨、今年7月の豪雨で決壊が確認された東日本や九州の75河川の堤防147カ所のうち、阿武隈川上流(福島県)や吉田川(宮城県)、球磨川(熊本県)などの84カ所はいずれも計画された高さを満たし、整備が完了した状態だったという。台風19号で約70メートルにわたって決壊した千曲川(長野県)の堤防は1984年に完成し、強度を維持する盛り土工事もされていた。
 河川を管理する国や都道府県は洪水対策として、100年や200年に1度の洪水に耐えられる強さの堤防などを整備し、河川に水を封じ込めようとしてきた。
 だが、近年は気候変動の影響で記録的な大雨が増加。国交省によると、1時間に50ミリ以上の「非常に激しい雨」は約30年間で約1・4倍になり、堤防の耐久性を上回る降雨が相次ぐようになった。
 堤防の決壊で大規模な被害が起きた2018年の西日本豪雨などを受け、国交省は堤防を強化する緊急対策を実施し、全国約2万1千河川を調査。国交省のまとめでは、台風19号や7月豪雨で決壊した147カ所の大部分は、「対策の緊急性は低い」などとして対象から外れていた。

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