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風前の漆文化、林を再生 最大産地の岩手県二戸市 専門職員が苗木づくり

 日本人が暮らしのなかで、古くから広く使ってきた漆器。その独特のつやと質感を生む漆が、国内でほとんど採られなくなっている。国内最大の産地、岩手県北部の二戸市は漆文化を将来に残すため、漆の林を再生し、持続可能な利用を目指す取り組みを始めた。
 苗木づくりを担う高田宣治さん(51)は、市でただ一人の「漆林フォレスター」。昨年4月、地域おこし協力隊として市の非常勤職員になり、群馬県から移り住んだ。地元の浄安(じょうあん)森林組合とともに苗木の大規模栽培に挑んでいる。着任早々、26万粒あまりの種をまき、苗木づくりを始めた。
 漆器や漆を英語で「japan」というように、漆は日本文化の象徴的存在だった。しかし、中国産などの輸入漆に押され、国内の漆生産は急激に衰退。2018年の自給率は5%ほどだ。
 二戸市とその周辺で採れる「浄法寺漆」はいま、国産漆の7割を占める。とはいえ、漆生産の厳しい現実は、ここも同じ。14年には生産量が過去最低の645キロにまで減った。
 転機は翌15年。文化庁が、国宝・重要文化財建造物の保存修理に「原則として国産漆を使用する」という通知を出したのがきっかけだった。保存修理のために必要な国産の漆は、年平均で約2・2トン。国内の漆生産を倍に増やす必要がでてきた。
 二戸市は翌16年、漆を採る「漆掻(か)き」を育成するため、地域おこし協力隊として、漆掻きを担う「うるしびと」の募集を始めた。昨年、このうちの1人を「漆林フォレスター」に充て、高田さんを採用した。
 いま、こうした取り組みの効果が少しずつ現れ、昨年の漆の生産量も1256キロにまで回復した。

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