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スギ花粉、油・微生物で防げ 東京農大や森林総研が研究 雄花枯らし8~9割減、省力化期待

 東京農大の小塩海平教授が民間企業と共同開発したのは、天然油脂に由来する花粉飛散防止剤だ。夏から初秋にスギの若い雄花に吹きかけると雄花だけが枯れ、翌春に飛ぶ花粉が9割も減らせた。
 小塩教授は25年以上前から、試行錯誤を重ねてきた。粘り気ある液体で花粉を固めようと、松ヤニや海藻のヌルヌル成分「アルギン酸」などに、雄花を漬け込んだ。花粉は固まらなかったが、サラダ油に漬けた雄花が枯れた。微量のサラダ油を混ぜた溶液をヘリコプターでスギ林にまく実験で効果を確認した。
 最終的に、天然油脂由来の界面活性剤を主成分とする花粉飛散防止剤を開発した。林業試験場で効果や環境への影響を調べ、農薬として正式登録した。小塩教授は「自然にも体にもやさしい薬剤です」という。
 森林総研のチームはスギの雄花を枯らす微生物を研究している。注目したのが、菌類の「シドウィア・ジャポニカ」だ。雄花に吹きかけると枯れ、花粉量を8割以上減らせた。
 国内100カ所以上で調べたところ、この菌が北海道から九州まで広い範囲にいることがわかった。もともといる菌類なので、スギ以外への影響は少ないと予想される。現在、有効な散布法を研究中だ。
 これまでも、スギ林の伐採や、花粉の少ないスギへの植え替えなどが進められてきた。だが、伐採や植え替えには人手や費用、時間がかかる。花粉飛散防止剤は吹きかけるだけなので即効性が期待される。研究チームの升屋勇人・森林総研微生物生態研究室長は「ほかの対策のすき間を埋める手段になりうる」と話す。
 

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