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宇宙天気予報、本格運用へ 太陽の活動監視、人工衛星や航空機に悪影響

 人工衛星や地上の通信・放送に影響を与える太陽表面の活動を監視、予測する「宇宙天気予報」に国が本格的に乗り出す。情報通信研究機構(NICT)は人工知能(AI)を使った予報を9月にも始める。

 太陽表面で大規模な爆発(フレア)が起きると、電気を帯びた粒子やX線などが大量に放出され、人工衛星などが故障する。また、地球の磁場が乱れる「磁気嵐」で、無線などの通信障害などが起きる。
 社会への影響も実際に起きている。1989年、カナダで約9時間にわたり停電して約600万人が影響を受けた。2003年には、日本の環境観測技術衛星「みどり2号」が太陽フレアで電子回路が破損し、運用を断念した。航空機の運航が一時停止したことや、飛行ルートを極付近から低緯度に変更したこともある。
 NICTは昨年、太陽の観測画像30万枚を使い、AIを活用して、太陽フレアが起こったときの黒点周辺の特徴を見つけ出して予測する手法を開発。予測精度を5割から世界最高水準の8割以上にまで上げることに成功した。このシステムを9月にも、日々の宇宙天気予報業務で活用する。
 現在NICTは「宇宙天気予報センター」が、太陽活動の情報を毎日発信している。ただ、基礎研究の位置づけで、観測態勢は平日8時間と限られている。
 本格運用に向け、国は来年の通常国会に電波法改正法案を提出する予定で、宇宙天気業務を総務省の所管と位置づける。NICTの業務について通信や放送事業者から徴収している電波利用料の一部を充てられるようにする。
 米国では宇宙天気は地震や津波などと同等という認識だ。オバマ政権時代の15年に「国家宇宙天気戦略」と「宇宙天気行動計画」を策定。連邦議会にも研究や予報業務を強化するための法案が提出されている。
 航空機の運航をめぐり、国際民間航空機関(ICAO)は「宇宙天気センター」を創設する予定で、日本も参加を目指す。同センターの参加機関になるには24時間365日の観測態勢が必要になる。

 ◆キーワード
 <宇宙天気> 太陽活動により影響を受ける地球近くの磁気圏や電離圏の状況。太陽表面で大規模な爆発(フレア)やコロナガスの放出が起きると、電気を帯びた粒子や高速の太陽風、紫外線、X線が大量に放出される。これらが地球に到達すると、周りを回る人工衛星が故障したり、宇宙飛行士が被曝(ひばく)したりする。地球の磁場が乱れる「磁気嵐」が起きると、無線などの通信障害やGPSの測位情報の誤りのほか、送電線に強い電流を生じさせて、電気製品が壊れたりすることがある。

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