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高級キノコ、人工栽培成功 キヌガサタケ 郡上のメーカーが来年、本格出荷へ/岐阜県

 白いレースのような笠をまとった珍しいキノコ「キヌガサタケ」の商用人工栽培に郡上市のキノコメーカーが成功した。国内のキヌガサタケの人工栽培は珍しいといい、来年からの本格栽培をめざす。

 キヌガサタケは竹林などに生えるキノコで、中国の宮廷料理でツバメの巣やフカヒレなどとともに料理される高級食材として知られている。人工栽培の研究は各地で行われているが実用化は難しく、市場に出回っているのは中国産の乾燥ものがほとんどだという。
 ハルカインターナショナル(郡上市和良町横野)では約10年前からキヌガサタケの人工栽培を研究。竹のチップに牛ふんなどをまぜて発酵させたものに菌糸を植え、その上から土をかぶせるという栽培方法を確立した。約150平方メートルの畑で数万個がとれる見込みで、今年は味を見てもらうために国内外の高級料理店などに提供している。
 食用キノコに詳しい日本きのこ研究所(群馬県)の牧野純主席研究員は「研究機関などでのキヌガサタケの人工栽培の報告はあるが、私が知る限り商用の人工栽培は国内では例がない」と話す。
 キヌガサタケは日本の竹林にも自生しているが、独特の生態のため収穫して食べるのは難しい。まんじゅうのような形をした「幼菌」の状態から、早朝に一気に伸びてレース状の網が開くが、いつ伸びるか分からない上、数時間で倒れてしまうという。
 人工栽培に成功した要因として、同社の井上九州男会長(69)は「キノコ本来の力を引き出した」と話す。通常、キノコの人工栽培はキノコの菌を雑菌から守るため、密閉されたハウスで行う。しかし、郡上の畑は常に外の空気が通る状態で、上からはくみ上げた地下水の霧を吹きかける。
 石油などの燃料を使った温度調整も一切行わず、農薬も使わない。井上会長は「雑菌からキノコを守っても弱いキノコしか育たない。雑菌に負けないキノコにすることが大事だ」と話す。
 栽培には竹を使うため、全国で増えている放置竹林の問題解決につながる可能性もある。放置竹林に菌糸を植え付けて、竹をしならせてハウスを作り、竹林全体をキノコ畑にする構想もあるという。
 同社では、農場周辺の木の葉っぱを菌床の材料にし、キノコが生えたあとの菌床は堆肥(たいひ)にするなど循環型のキノコ栽培を志向する。井上会長は「循環型のキノコ栽培を行いながら、フレッシュなキヌガサタケのおいしさを知ってもらい、岐阜の名産にしたい」と話した。

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