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よみがえれ、名産ワサビの里 早良・脇山地区、住民有志が再生プロジェクト /福岡県

 脊振山の北に位置する福岡市早良区の脇山地区はかつてワサビ産地として知られていた。その復活をめざして、脇山公民館が中心になって「ワサビ田再生プロジェクト」を進めている。来年2~3月の収穫に向けて住民有志が栽培に汗を流す。

 大正時代に編集された「早良郡志」には「山葵(わさび)は脇山山間部の特産物」「板屋・椎原の谷間には、古来自然生の山葵ありて(中略)近年之(これ)を園芸的に栽培」などと記されている。脇山は、昭和天皇の即位に伴う大嘗祭(だいじょうさい)(1928年)の主基斎田(すきさいでん)の地に選ばれ、献上米を納入する際に椎原のワサビも献上した。しかし、ここ20~30年は、酸性雨の影響や山林の荒廃、生産者の高齢化などにより生産量は激減したという。
 脇山公民館の大鶴進吾館長が、市の公民館支援事業を利用して、地域に関わりが深いワサビ田の再生プロジェクトを企画した。地区では65歳以上の住民の割合が約36%。大鶴さんは「高齢化が進む中、地域活動の担い手を発掘して地域おこしにつなげたい」と話す。
 70代を中心にした住民有志約20人で昨年6月に活動を始めた。ワサビの自生・栽培状況を調べたうえで、作業効率を考慮して栽培地を選んだ。川砂や小石を敷いて約15平方メートルを整地し、畝(うね)を五つ設けて沢水を引いた。今年3月には約110株の苗を植えた。
 今年度は6月に活動を再開。6月22日にワサビ田を整備した。生い茂った草を抜き、水路の泥を除いて水が流れるようにした。田の周囲に打ち込んだ杭に遮光シートを結びつけ、田全体を覆った。参加した6人が雑談も交えながら作業を進めた。メンバーの一人、重松重興さん(74)は「わいわい言いながら、作業できるのがいい。楽しみが一つ増えました」と喜ぶ。
 まだ試行段階だが、栽培が軌道に乗れば、収穫したワサビや加工品を地区内の農産物直売所で販売する予定だ。10年後を見据えて大鶴さんは「若い世代が夢を感じ、参加したくなるようなプロジェクトにしていきたい」と話す。

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