縄文人、ルーツは東南アジア? 金沢大など、人骨の全ゲノム解読 【大阪】
- 2018/07/12
- 朝日新聞
- 朝刊大阪
約2500年前の縄文人の人骨に含まれる全ゲノム(遺伝情報)を解析した結果、約8千年前の東南アジアの遺跡で出土した古人骨から得られたゲノム配列と似ていることが、金沢大学の覚張(がくはり)隆史特任助教(生命科学)らの研究グループの調査でわかった。縄文人の全ゲノム配列の解読に成功したのは世界で初めて。日本人の祖先が、どこから来たのかを考えるうえで注目されている。
研究成果は11日、横浜市で開催中の国際分子生物進化学会で報告されたほか、6日付の米科学誌サイエンス電子版に発表された。
覚張さんらの研究グループは、コペンハーゲン大学を中心とした国際研究チームと共同で調査。愛知県田原市の伊川津(いかわづ)貝塚で出土した縄文時代晩期の成人女性の人骨1体について全ゲノム解析を行った。日本のような温暖湿潤気候の地域では、人骨のDNAは劣化しやすく調査は難しいとされてきたが、最新の研究手法で縄文人の全ゲノム配列を初めて解読した。
この結果を東南アジア各国の遺跡で出土した人骨25体や現代人のデータと比較すると、東南アジアの先史時代の人々は六つのグループに分類できることが判明。そのうちの約8千年前のラオスと、約4千年前のマレーシアの遺跡でみつかった人骨のグループのゲノム配列の一部が、伊川津貝塚の人骨と類似していた。
日本人の祖先は、約4万年前以降、東アジア各地から日本列島に移住したとされる。そのルートは朝鮮半島から対馬経由の「対馬ルート」、シベリアから南下する「北海道ルート」、台湾付近から琉球列島への「沖縄ルート」の主に3ルートが想定されてきた。
さらに、伊川津貝塚の縄文人のゲノムが、現代日本人のゲノムに一部受け継がれていることも分かった。
覚張さんは「東南アジアの一部にいた人々と、日本列島の中央に位置する伊川津貝塚の縄文人が、遺伝的に深いつながりのあることが科学的に実証された。縄文人の移動ルートを考えるうえで今回の成果は大きい」と話す。