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キノコを多種多食、巨大化 タカツルラン 佐賀大・辻田准教授ら、仕組み解明/佐賀県

 ツルが何メートルも木を登るランがある。葉っぱがなく、光合成をしない代わりに、木に付いている様々なキノコを「食べる」ことで巨大化する――。そんな仕組みを佐賀大の辻田有紀准教授らが明らかにした。

 この奇妙な植物は「タカツルラン」。自らのツルと根を、巨木の幹に張り付けて登る。その高さは最大10メートルにもなる。
 光合成をせず、根に共生する菌類から栄養を得る陸上植物はあるが、その多くは数センチ~数十センチほど。世界最大というタカツルランが、どのように巨体を維持しているかは謎だった。
 辻田氏らは、タカツルランの根を調べ、37種もの菌類を見つけた。そのほとんどがサルノコシカケ科など、タカツルランがよじ登る木を分解するキノコの仲間(木材腐朽菌)だった。
 同様の植物は、共生する木材腐朽菌の種類が限られており、タカツルランのように多数の木材腐朽菌と共生する植物は知られていなかったという。巨体を維持するには、たくさんの菌が必要とみられる。
 木を「食べる」キノコを「食べる」タカツルラン――。なぜ木を食べる多くの菌と共生できるかは不明だが、辻田氏は「例えるなら『猛獣使い』。(自らを襲うかもしれない)トラだけじゃなく、ライオンもクマも来いという感じ」と話す。

 ■「原生林減ると消滅」
 辻田氏によると、タカツルランは日本では鹿児島と沖縄のみに自生。環境省のレッドリストで、「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い」とされる絶滅危惧1A類に指定されている。
 多数の木材腐朽菌から栄養を得る「通常ではあり得ない」(辻田氏)能力を持ちながら、なぜ細々と生息しているのか。
 辻田氏によると、巨体は高いところから種を飛ばすのに効率的だが、維持するには多くの菌を確保する必要がある。張り付くのは大木や、大きな倒木に限られることになるが、それも菌がその木を分解してしまうまでの期間限定。世代交代には多くの大木が近くになければならない。
 辻田氏は「原生林が減り、そういった場所は希少になっている。森がなくなると、こういった植物も消えてしまう」と指摘する。

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