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絶滅危惧種イトウ「遡上時期早まる」 猿払でシンポ、研究を報告 /北海道

 国内最大のサケ科の淡水魚で絶滅危惧種の「イトウ」の保護について考えるシンポジウム(猿払イトウ保全協議会主催)が6日、猿払村で開かれ、環境DNAや水中音響ビデオカメラなど最新の技術を使った研究が報告された。
 環境DNAは河川水から検出されたイトウ由来のDNAをもとに生息状況を推定する技術で、北海道大学大学院農学研究院の荒木仁志教授と水本寛基学術研究員が、これまで調べた道内の100以上の河川での調査結果を発表。イトウのDNAが検出された十数河川のうち、猿払川水系の生息密度が際立って高いことなどを報告した。
 猿払川水系の上流では5年前から、国立環境研究所が4~5月に堰堤(えんてい)わきの魚道に水中音響ビデオカメラを設置し、産卵のため遡上(そじょう)するイトウの個体数を調べている。調査にあたる米国の国際環境NPOワイルド・サーモン・センターのピート・ランド主任研究員は「毎年約400個体が安定的に遡上しているが、遡上時期が早まっている。地球温暖化がイトウにどのような影響を与えているかも注視したい」と話した。
 この後、参加者は猿払川水系の上流を視察。増水で川水が濁り、赤い婚姻色のイトウが遡上する様子は見られなかったが、実際に水中音響ビデオカメラの設置場所を確認したほか、今年に遡上状況などについて説明を受けた。
 シンポジウムは、イトウの保護や生息環境の保全、人間社会との共存のあり方などを考える場として毎年開かれている。今回は研究途中の報告だが、小山内浩一会長は「直接目に見えないイトウの生息状況を先端技術を駆使して調べる最新の研究」として、今後の研究に期待していた。

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