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トラフコウゾ「古里」へ 手すき和紙原料、宮城から 鬼北 /愛媛県

 鬼北町などで江戸時代から伝わる手すき和紙の「泉貨紙(せんかし)」づくり。町では原料のコウゾ作りは途絶えていたが、この春、伊達家つながりでゆかりがある宮城県白石市で受け継がれていた「トラフコウゾ」の株を譲り受けた。町内で栽培し、将来の紙づくりに生かす。

 町内の有志らでつくる「鬼北泉貨紙保存会」(会員7人)の平野邦彦会長(55)によると、鬼北町に伝わる泉貨紙は厚手で丈夫。雨具や袋などに用いられた。現在は町内の学校の卒業証書に使われている。
 原料のコウゾは元々地元産を使っていたが、現在は育てておらず、高知県産などを使っている。ただ、保存会のような規模の小さい作り手には確保が難しくなりつつあるという。
 1615年、仙台藩主伊達政宗の長男秀宗が宇和島に入って宇和島伊達家の初代藩主になり、鬼北町なども治めた。保存会によると、愛媛のコウゾが白石和紙で有名な白石市に持ち込まれ、受け継がれていたという伝承が、仙台藩だった白石市側に残っていた。平野さんはこの伝承を知り、コウゾの株を譲り受けられないか関係者との調整を進め、今春実現した。
 白石和紙の技を伝えるグループ「蔵富人(くらふと)」の阿部桂治さん(49)は「白石和紙の職人の間では『トラフコウゾ』と呼ばれ、大切に受け継がれた。『里帰り』することになり、時間と距離をこえて交流につなげていきたい。活動の励みになる」と喜んでいる。
 3月15日に鬼北町の兵頭誠亀町長や平野さんらが白石市内での贈呈式で株を受け取った。30日には鬼北町の泉公民館前に植樹し、平野さんは「白石市と鬼北町の交流のシンボルとして大事に育てていきたい」とあいさつした。
 贈られた株は将来の和紙作りに生かすため、町内にある県立北宇和高校で増やす。平野さんは「かつて作られた泉貨紙を目指したい。地元の子どもや若者が泉貨紙に関心を持ってくれればうれしい」と期待している。

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