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ギフチョウ、絶滅危険度増す 県レッドリスト、ランク改訂 /山口県

 アゲハの一種で県内が分布の西限とされるギフチョウ。県は今年、16年ぶりに改訂した「県レッドリスト」で、「ごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高い」とする絶滅危惧1A類にランクを引き上げた。「春の女神」は県内から姿を消してしまうのか。
 12日、周南市立八代小学校(今田浩校長、12人)であった「放蝶(ちょう)式」。児童たちが1年間かけて育てた46匹を飼育箱から取り出し、次々と自然に放した。
 が、チョウは児童の手元から離れない。頭や肩にまとわりつき、手のひらの上で交尾する雌雄も。
 成虫の寿命は2週間ほどと短い。羽化してすぐに交尾を始め、産卵を終えて息絶える。幼虫が生まれるのは5月初旬。カンアオイの葉を食べて育ち、1カ月ほどでさなぎになる。
 地元で保護活動に取り組む田島実さん(67)の指導を受け、八代小が人工飼育に乗り出したのは1990年から。田島さんから託された卵をかえし、幼虫に葉を与えたり、ふんの掃除をしたりして育てている。放蝶式では3年生の宮本侑君(8)が1年間の飼育体験を発表。「卵の色が変わり、幼虫が生まれたときは本当にうれしかった」と話した。
 県自然保護課によると、ギフチョウは1990年代初頭には県内に広く分布していたという。分布域が急速に狭まったのは2000年以降で、温暖化の影響でカンアオイの繁殖域が狭まったことなどが原因だ。日本の固有種で九州や四国には生息せず、県内でここまで急激に減少したチョウ類は少ないため、従来の絶滅危惧2類から1A類に引き上げたという。
 黒と黄色のしま模様の羽が美しく、「春の女神」と呼ばれるかれんなチョウ。田島さんは「温暖化に加え、里山の崩壊も心配。子どもたちと一緒に地域の宝を大切に守っていきたい」と力を込める。
 6年生の佐藤さくらさん(11)もギフチョウが大好きだ。「羽の色やヒラヒラした動きがとても可愛い。ずっと世話をしているので身近な生き物に思えてしまうけれど絶滅が心配。いっぱい仲間を増やしてほしい」

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