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林伐採で狩り場確保、イヌワシ出現増 みなかみ・赤谷の森 /群馬県

 絶滅危惧種のイヌワシが生息するみなかみ町の「赤谷(あかや)の森」で、人工林を伐採してイヌワシが狩りのできる環境をつくったところ、出現頻度が高まるなどの結果が出たと日本自然保護協会が発表した。昨年まで2年連続で子育てが成功したのも、こうした環境改善がプラスに働いたのではないかと見ている。

 イヌワシは翼を広げると2メートルにもなる大型の猛禽(もうきん)類で、国内では500羽程度が生息する。赤谷の森でも27年前に発見され、現在も雌雄1組が生息している。2015年まで6年連続で繁殖に失敗していたが、16~17年と2年連続で子育てに成功したことが同協会などの観察で分かっている。
 イヌワシはノウサギやヤマドリが捕らえやすい草地や低木が多い環境を好み、日本のように森にすむのは珍しいとされる。戦後、自然林の伐採とスギなどが盛んに植えられた当時は狩りの環境が一時的に向上した。だが、林業の衰退で山を手入れしなくなると木々が高密度に生えて狩り場もなくなり、生息数の減少が報告されるようになった。
 赤谷の森では国、地域住民、同協会の3者が、人工林を自然林に戻す試みの中でイヌワシが生息できる環境づくりを進めている。発表によると、15年秋にスギの人工林約2ヘクタールの試験地の木々を全て伐採したところ、上空で獲物を探す行動や狩りのための急降下が初めて確認された。出現頻度も伐採前より1・4~1・6倍も高くなったという。
 2ヘクタールもの規模の伐採は例がなく、「少なからず生息環境にプラス効果をもたらし、それが子育てにもつながった」と評価した。同協会の出島誠一さん(43)は「成熟した自然林は樹間が広く、とくに広葉樹は冬に枝を落とすので狩りがしやすくなる。短期的には伐採で改善するにしても、長期的には成熟した自然林の復元が必要だ」と話す。

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