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エコなカキ養殖、国際認証取得へ 石巻の県漁協3支所、4月にも /宮城県

 石巻市にある県漁協3支所が4月にも、持続可能なカキ養殖を国内外に証明する「ASC認証」を取得する。南三陸町の志津川支所戸倉出張所が2年前に取ったのに続く国内2例目。取得後は、県産のほぼ半分が環境などに配慮した養殖との「お墨付き」を得ることになり、ブランド力の強化で消費拡大を図る狙いだ。

 認証を得る3支所は、石巻湾中央部と荻浜湾が漁場の石巻地区支所、石巻湾支所と石巻市東部支所。
 きっかけは、昨年6月にあった地区支所所属のカキ養殖漁師らと大手スーパー・イオンの担当者との話し合い。その際、資源の枯渇や環境汚染を招かず、労働環境にも配慮した養殖を世界的に広げる目的で2010年に設立された「水産養殖管理協議会」(ASC、本部・オランダ)による認証を勧められた。
 イオンは持続可能な商品の仕入れを増やす方針を打ち出しており、戸倉出張所の認証カキを優先的に取り扱っている。だが、むき身の重量で県内生産量の約1割以下である約130トンにとどまっているため、流通は主に東北どまりで、域外への売り出しには至っていない現状がある。
 一方、石巻のカキPRで協力関係にある3支所の生産量は16~17年の昨季で計774トン。震災以降、県全体の半分程度で推移している。これらのカキが認証されれば安定供給できるため、大消費地の首都圏などの店舗での展開も見込める。実現すれば、震災後に他県にシェアを奪われた県産カキの消費拡大につながる可能性があるという。
 そこで、3支所で取得の是非を検討。環境面で海に浮かべる養殖いかだの台数を減らさなくても認証条件をクリアできそうなことや、認証で豊かな海を守る意識が高まり、そうした漁場の維持が若い世代の後継者を呼び込む効果も期待できることから、合同で取得を目指すことにした。
 荻浜湾では震災後、水産業復興特区で新規参入した桃浦かき生産者合同会社もカキを養殖しているが、同社も認証取得に前向きで漁協に同調している。
 昨年11月と今年1月には審査機関が、カキのふんによる海底の汚れ具合や殻のリサイクル、従業員の働き方など、環境面や社会的に持続可能な養殖かどうかを調査。おおむね良好なデータが得られたとし、4月をめどに取得に向けた手続きが進んでいる。
 津波で壊滅的な被害を受けた県内カキ養殖の生産量は、何とか全国2位の地位を取り戻したものの、今も震災前の半分ほどにとどまっている。県や市は、かつてのカキ養殖の隆盛ぶりを復活させようと、3支所の認証取得に必要な費用300万円も4分の3を補助して後押しする。来年以降、毎年必要となる監査費用100万円も、2年間は県と市が4分の3を負担する方針だ。
 国内では東京五輪を2年後に控え、地球規模の持続可能性や環境に配慮する機運が高まりつつある。ASC認証を取得する動きもその一つだ。
 ASC認証のラベルをつけた3支所のカキの本格出荷は今秋以降となりそうだが、小野寺賢・石巻地区支所長は「今後、ASC認証のカキへの需要が高まっていくと思う。カキ養殖をなりわいにと考える若者も増えつつあり、彼らにきれいな海を残していくことも必要だ」と話している。

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