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永久凍土に大量の水銀 温暖化進むと溶け出す恐れ

 北半球の陸地の2割を占める永久凍土地域の土壌に、大量の水銀が閉じ込められていることが、米地質調査所(USGS)などの研究で分かった。地球温暖化が進んで凍土が溶けると、水銀が環境中に放出される恐れがある。
 研究チームは、2004年から12年に米アラスカの永久凍土地域の13カ所で、地表98センチ~248センチの深さの土壌を採取し、水銀の濃度を調べた。シベリアなどほかの地域のデータと照合して、推計したところ、北半球の永久凍土地域の土壌には165万6千トンの水銀が含まれていることが分かった。ほかの地域の土壌や海、大気中にある水銀の総量の2倍近いという。
 水銀は、火山の噴火や岩石の風化といった自然現象のほか、石炭などの化石燃料の燃焼、金の採掘など人間の活動によっても排出される。排出された水銀は分解されず、自然界を循環するが、永久凍土地域では、凍った土壌に閉じ込められて蓄積したと見られる。
 永久凍土には、温暖化の原因となる二酸化炭素やメタンが封じ込められていることが知られている。温暖化で融解が進んでおり、温室効果ガスの排出がこのまま続けば、今世紀末までに30~99%減るとする研究もある。凍土の水銀が水に溶け出せば、微生物の働きで、水俣病の原因となった猛毒のメチル水銀に変わる。食物連鎖で魚に蓄積され、健康影響が広がる可能性がある。
 研究チームを率いたUSGSのポール・シュスター氏は「永久凍土は巨大な水銀プールだ。溶け出したら何が起きるのか。食物連鎖でどこまで運ばれるのか。大きな問いに答えなければならない」とコメント。今後温暖化により溶け出す水銀の推計をするという。(ワシントン)

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