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日・米・メキシコ、太平洋のアカウミガメ回復計画 混獲防止など策定へ

 太平洋を横断するアカウミガメの共同回復計画を、日本、米国、メキシコの3カ国が今夏にもつくる。魚をとる網に絡まる混獲防止などの対策の相互評価や成果の共有を進め、保全を強化する。18日から神戸市で始まる国際シンポジウムで中間報告がある。
 日本は渡り鳥などで国際連携をしているが、ウミガメ保全では初。海生動物で他国とこうした回復計画をつくるのは珍しい。
 アカウミガメは世界の温帯や亜熱帯地域にすみ、甲羅の長さが70~100センチ。日本では1990年代に全国的に産卵のための上陸回数が激減、絶滅危惧種に指定されている。
 国際自然保護連合(IUCN)によると、世界には10の個体群があり、今回の計画の対象は、日本で産卵・孵化(ふか)後、太平洋を横断し、北米側で成長、日本に戻って産卵する「北太平洋個体群」だ。
 計画には、日本の環境省、水産庁、米海洋大気局、メキシコ農畜農村開発漁業食糧庁などが参加。個体群を「長期的な生存を可能とするまで回復させる」と目標を設定、生息地の管理や、陸上・海洋での個体の保護、普及啓発などを盛り込む。
 具体的には、定置網やはえ縄による混獲、産卵地などの護岸工事、地球温暖化などのカメへの脅威をリストアップし、その度合いを「高い」「中程度」などとお互いに評価。禁漁区の設定や、カメが脱出できる網、砂浜の維持・修復などを検討する。
 個体数や産卵回数がどのくらい改善したかなどを指標に、費用対効果も分析し、対策の優先順位付けに役立てる。
 日本は、鳥類保護で米国やロシアなどと「渡り鳥条約」と呼ばれる二国間の条約や協定を結ぶが、移動が広範囲にわたる生物の保護を定めた「ボン条約」には捕鯨批判への懸念などから未締結だ。回復計画の策定を進めている国際ウミガメ学会の松沢慶将会長は「海生動物の保全で、多国間での協力が始まるのは意義ある一歩だ」と話す。

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