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害虫駆除の星、研究飛躍 テントウムシの羽固定、農業大学校で実用化 /千葉県

 テントウムシを一時的に飛べなくし、ハウス栽培のテントに放してアブラムシを駆除する――。県立成田西陵高校(成田市)の生徒らが開発した技術をもとに、県立農業大学校(東金市)の学生たちが、そんな害虫駆除の実用化に成功した。羽を樹脂で固めて飛べなくする手法で、化学合成農薬の低減につながり、自然に優しい害虫対策として注目される。

 テントウムシは、ハウス栽培の野菜や果物につくアブラムシの天敵だ。ただ、放っておくとすぐ飛んでいってしまう。
 県立農業大学校によると、これまでも、飛ぶ能力が低い個体を交配させて生まれたテントウムシを駆除用に商品化したケースがあるという。
 それに対し今回は、「殺虫剤を散布したり、トラクターで耕したりする前の県内の農場から、テントウムシの一種『ナミテントウ』の成虫や卵などを集めて繁殖させる」「育てたナミテントウの羽に、手芸などで使う『グルーガン』と呼ばれる工具で特殊な樹脂を垂らして一時的に固定する」という手法をとった。
 これだと、樹脂は約2カ月ではがれてナミテントウは再び飛べるようになり、繁殖能力にも影響はないという。大量に個体を用意できるのも利点だ。
 もともとこの技術は、県立成田西陵高校の生徒が2014年に開発したものだ。さらに実用化に向けて進めたのが農業大学校の生徒たちで、パラフィン紙でつくったパックの中に飛べないナミテントウを入れ、開封して置くだけで農場に放たれる技術を開発した。パックは自然分解されるという。
 実地試験を行った結果、1平方メートルあたり2匹を放つことでアブラムシの防除効果が高まることが確認できた。イチゴやナス、ピーマン、コマツナといった農作物に効果があるという。
 昨年5月に特許出願し、今年1月に「テントロール」の名称で販売を開始。価格は1袋10匹入り500円で、今後、農家を対象に販路を広げたいという。
 指導する農業大学校の清水敏夫講師(46)は、以前は成田西陵高校の教員だった。清水さんは「高校生が研究したものが、農業大学校で商品になった。環境に優しく、生態系の保護にもつながるこの方法で、害虫防除を進めたい」と話す。

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