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枯死危機、後継樹育成へ 養父・青谿書院シンボルのモミの木 /兵庫県

 養父(やぶ)市八鹿町宿南の青谿書院(せいけいしょいん)のシンボルツリー、モミの木の樹勢が衰え、枯死が免れない状態になったため、所有者の同書院保存会(池田哲二会長)と同市教委は、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センター関西育種場(岡山県勝央町)に「後継樹」(クローン苗木)の育成を依頼した。種から育てたモミの台木を使い、採取した枝で接ぎ木をして関西育種場で育て、同書院への「里帰り」を目指す。原木は枯れても「クローン苗木」で後世に残す取り組みだ。

 市教委によると、幕末の儒学者池田草庵(1813~78)が弘化4(1847)年に同書院を開塾した際に、マツとカシ、モミの3本を植えた。マツとカシはすでに枯れて残っていない。モミの木は樹齢約170年、樹高約25・5メートル、幹周り3・85メートルにまで育ち、草庵の教えを説く絵本「モミの木は高くそびえて」の題名にもなっている。
 一昨年夏ごろ、モミの木の衰弱がわかって朝来市在住の樹木医、宮田和男さん(77)が中心になり、幹の根元の周りの土をやわらかくするため、溶剤を溶かし込んだ水を注入、雨水がよく染み込むように土壌を改良もしていた。
 宮田さんの助言を受け、万が一のことを考えた養父市教委は昨年2月、関西育種場の「林木遺伝子銀行110番」に申請。関西育種場は後継樹の増殖に使う枝を同月に16本採取して台木に接ぎ木した。うち7本が育ったが、成長が思わしくないため、今年2月7日にも12本の枝を採取。4月に接ぎ木をする予定になっている。一方、宮田さんは昨年、原木から採取した種から苗を育てる取り組みもしており、同様に後継樹を育てて書院の一角に植樹したい意向があるという。
 作業に当たっている関西育種場遺伝資源管理課の河合貴之係長(35)は「接ぎ木で元の木と同じ性格の苗木に育てることができる。接ぎ木の活着や畑での成長の状況によって現時点で何本育てることができるかや、いつ里帰りさせることができるかは明言できないが、里帰りできるようにしたい」と話している。

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