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紀伊の早咲き桜、新種かも 野生種では100年ぶり、半島南部に自生 【大阪】

 紀伊半島南部で見られる早咲きの桜が、野生種としては国内で約100年ぶりの発見となる新種の可能性が高いことが、国立研究開発法人「森林総合研究所」の調査でわかった。和歌山、奈良、三重3県の一部でもともと自生し、今回新たに「クマノザクラ」と名づけられた。

 8日に和歌山市であったシンポジウムで、同研究所多摩森林科学園(東京)のサクラ保全チーム長、勝木俊雄さん(50)が発表した。現在、国内で見られる野生の桜の基本種は、分類方法にもよるが、ヤマザクラやオオシマザクラなど10種とされる。他に、人工交配や突然変異で生まれ、人の手で育てられているソメイヨシノなどの栽培品種が多数ある。今回確認されたクマノザクラは自生の新種と考えられ、変種などではなく、新たな基本種として認められれば1910年代のオオシマザクラなど以来という。
 きっかけは、勝木さんが紀伊半島南部で調査していた数年前にさかのぼる。ある桜を見て「どうも他のと違う」と違和感を抱いた。
 2016年から和歌山県林業試験場などの協力を得て、古座川町や那智勝浦町で本格的に調査した。出会った古座川の住民は「この地域のヤマザクラは年に2回咲く」と話していたという。調査の結果、3月中旬からクマノザクラが咲き、4月中旬からヤマザクラが開花することが分かった。
 地元ではクマノザクラは紀伊半島南部に自生するヤマザクラやカスミザクラと同じものと考えられていた。だが、勝木さんによると、それらと比べてクマノザクラは早咲きで葉っぱが小さい。花の一部や花と枝をつなぐ部分なども他の桜と異なる特徴がある。「クマノザクラの花びらは色が濃く、咲いた時に鮮やか。観賞用にも適している」
 和歌山、奈良、三重3県の南北約90キロ、東西約60キロの範囲に分布していると推定される。場所によっては数十本まとまって生えていたという。
 新種として認められるには専門誌への論文の掲載が必要。勝木さんは成果をまとめた論文を「日本植物分類学会」の英文誌に投稿し、年内にも掲載される見通しという。今後専門家によって検証されるという。
 和歌山県自然環境室の岡田和久室長(59)は「地元の人から『変わったヤマザクラがある』と聞いていた。やっと新種だと証明してくれる先生が現れた」と喜んだ。自然豊かな紀伊半島南部には他にも地名に由来する名の「キナンカンアオイ」や「キノクニスズカケ」など固有種の植物が存在する。「紀伊半島には調査しきれていない未知の部分が残っているのでは」と話した。

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