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イノシシ猛進、被害北上 「空白地域」の秋田にも

 イノシシが日本列島を北上している。これまでは西日本や関東などで深刻な農業被害が起きてきたが、冬を越せずイノシシが生息できないとされていた東北北部でも被害が出てきた。最前線の秋田県では、この数年で被害や目撃情報が北部にも広がっている。しかし、対策は難しいのが実情だ。

 「クマ、タヌキはよく見かけるけど、イノシシは初めて。また来るべか」
 秋田県北部、北秋田市の山あいの集落。昨年5月下旬にジャガイモ畑を荒らされた女性(77)は不安がる。初めはニホンカモシカの被害と思ったが、足跡からイノシシとわかった。

 ■北限、かつて宮城
 農林水産省などによると、イノシシは全国に約94万頭が生息するとみられ、2015年度の農作物被害は計約51億円に上った。獣類による被害額の36%を占め、シカ(42%)に次いで多い。最も被害が大きい九州で約15億円、中四国で約12億円、関東で約9億円。東北は約2億円とされる。
 秋田県などによると、イノシシは冬に30センチ以上の積雪が70日以上続く地域では越冬できないとされる。かつて生息域の北限は宮城県とされ、青森、秋田、岩手、山形は空白地域だった。

 ■温暖化が影響?
 しかし、山形、岩手で10年ごろから被害が出始め、秋田県では12年2月に南部の湯沢市で初めて確認された。以後、秋田県内での目撃情報は増え、16年度は延べ42頭に上った。今年度も昨年末までに延べ35頭を数える。農作物の被害も昨年度初めて発生。今年度はすでにイモ類、水稲など11件となっている。100年以上前に絶滅したとされていた青森県でも昨年8月、深浦町で確認された。
 北上の理由について、秋田県自然保護課は「温暖化の影響で積雪が減り、東北でも越冬しやすくなったことが一番大きい」と推測。今年度、5年間の「特定鳥獣管理計画」を施行し、捕獲を強化することにした。狩猟免許の取得や銃の購入への助成、狩猟者の育成に力を入れる。
 しかし、対策は難しい。1990年代中ごろから増え、生息域も県東部から西部へ広がった福島県。昨年度の農作物被害は約9500万円に上り、獣類全体の56・5%を占める。同県農業総合センターの木幡栄子主任研究員は「初期の農作物被害を、クマやカモシカによるものと思い込んだのが失敗。対策が後手に回ってしまった」と悔やむ。
 岩手県でも目撃が相次ぎ、農業被害が増えている。担当者は「わなを仕掛けても、なかなかかからない。猟友会の高齢化や人手不足に加え、技術的な課題も大きい」と頭を抱える。

 ■昔もいた可能性
 イノシシ被害の対策に詳しい中央農業研究センター(茨城県つくば市)の仲谷淳専門員は「青森ではイノシシ形の土偶が出土し、秋田には『猪』の付く地名が残るなど、昔は東北にもイノシシがいた可能性がある」と指摘。「江戸時代以前、東北ではイノシシによる被害が深刻になり、排除したのではないか。農業が盛んな東北にイノシシが戻ってくれば、大変な被害が出る恐れがある。共存か徹底的な排除か。地域の将来像をもとに、今何をすべきか早急に考えるべきだ」と警鐘を鳴らす。

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