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樹氷に落書き、問われるマナー 八甲田ロープウェー山頂公園駅周辺 /青森県

 青森市の八甲田山系の樹氷が、スプレーで落書きされていた。現場は十和田八幡平国立公園内にある自然豊かな観光名所で、地元から憤りの声が上がる。インバウンドの好調が続く青森で、どうやって観光客にマナーを守ってもらうかは地域が向き合わなければならない課題になっている。

 ■スプレーで英語や中国語
 八甲田ロープウェーの蝦名正晴社長によると、落書きがあったのは、ロープウェーの山頂公園駅から約15メートル離れた場所。樹氷2~3本と、その周辺の雪面約100平方メートルにピンク色の蛍光スプレーを使い、英語や中国語で「誕生日おめでとう」などと記されていた。
 通報したスキーヤーは同社に対し、「男女2人がスプレー缶を使って落書きしていた。日本語や中国語、英語で話し、注意してもやめなかった」と説明した。蝦名社長は「自然の美しい情景をひどく扱われて憤りを感じる」と憤慨する。監視強化も検討したが、「極寒の中では、人も置けず防犯カメラのバッテリーが持たない。外国語も含め注意する看板を設置するくらいしかない」と話す。

 ■自然公園法に抵触か
 樹氷への落書きは、どういう罪になるのか。
 県警の捜査関係者は、他人の所有物を壊した場合などに適用される器物損壊罪には「当たらない」とみる。スプレーが吹きつけられていたのは樹木そのものではなく周囲の雪なので「他人の所有物」とはならない可能性があるという。青森森林管理署によれば、森林法についても、樹木を伐採するなど傷つける行為がないため、違反しない。
 ただ、現場は自然公園法に基づく特別保護地区を含み、富士山頂付近と同じように落ち葉を持ち帰ることさえ禁止されるエリアだ。十和田八幡平国立公園管理事務所は、この地区での落書きは、同法が掲示を禁じる「広告物その他これに類する物」に該当する恐れがあるとみる。違反すると6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることもある。

 ■啓発「観光客に必要」
 県内を訪れる外国人観光客は急増している。2017年1~10月の外国人延べ宿泊者数は19万4千人(速報値)と東北トップで、前年同期と比べて6割増だ。パウダースノーが人気の八甲田山系も、外国人のスキー客が毎年約3割ずつ増えている、と蝦名社長は感じている。
 ただ、外国人観光客が増えるほど、地元との摩擦が問題となる。県観光連盟の鈴木耕司事務局長は「樹氷への落書きは常識からかけ離れている行為」と批判したうえで、「外国人観光客に限らず、マナー向上を呼びかけていくことが必要だ」と話す。

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