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輝く巨木、自然の循環思って メリケンパーク「世界一のツリー」 /兵庫県

 神戸市中央区のメリケンパークに「世界一のクリスマスツリー」として富山県氷見市の山中で育ったアスナロが飾られている。樹齢約150年のアスナロを掘り出してクリスマスツリーとすることや終了後の使い方を巡り、SNSなどで「かわいそう」などという意見もあるが、氷見市の人たちは「アスナロを通して、木がもたらす循環を考えてほしい」という。

 「うちは昔、『山屋』だった。あの木も曽祖父が植えた」。アスナロの持ち主だった氷見市一刎(ひとはね)の山口弘清さん(70)は言う。山屋とは、山に木を植えて育てたり、炭焼きをしたりする仕事。山口さんの祖父の代まで、専業で山屋の仕事をしていたという。
 山に木を植え、育ったら材木として出荷。跡地にはまた木を植える。これを繰り返す。「人間が植えた木を掘り起こして使うことは自然破壊ではない。新たな持ち主へ渡ったら、その人の良いように使えばいい」と山口さんは話す。
 氷見市海浜植物園の花みどり推進室の鈴木瑞麿室長によると、氷見市のアスナロのルーツは、元禄年間(1688~1704)に加賀藩が南部藩の下北半島からヒバを材木用として持ち帰り、能登や氷見に植えたこととも言われているという。この地域では「档(あて)」の名で親しまれてきた。
 「今は山が管理されなくなり、荒れてしまった」と鈴木さん。木の間の茂みを通って、イノシシなどの野生動物が、人家のある集落によく現れるようになったという。鈴木さんは「手入れをすることで、人と自然は共生してきた。あのアスナロを通して、自然を考えることは大事」と考えている。
 氷見市は26日、神戸市の会場で、氷見のブリを振る舞うなどのPR事業を実施する予定。林正之市長は5日の定例会見で「放っておけば人知れず木材として使われた木が、世界一のクリスマスツリーとして輝きを放ってくれた」と指摘。様々な意見が出ている中、神戸でクリスマスツリーになったことは「アスナロにとっても良いことだったのかなと思う」と話した。

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