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鎮守の森守るため、重ねた交友 熊楠と楚人冠、企画展で紹介 我孫子 /千葉県

 世界的な博物学者、南方熊楠(みなかたくまぐす)(1867~1941)とジャーナリスト杉村楚人冠(1872~1945)の交流に焦点を当てた展示「『知の巨人』熊楠と新聞人楚人冠」が、我孫子市杉村楚人冠記念館で開かれている。明治政府の神社合祀(ごうし)政策に反対し、鎮守の森を守ろうとした2人の見識と先進性を示す手紙など約20点が展示されている。

 熊楠の生誕150年を記念して企画された。2人はともに旧制和歌山中学の卒業生で、若い頃から親交があった。1887年に楚人冠が上京、熊楠が米国に留学して文通が始まった。
 熊楠は英国に渡り、英科学誌「ネイチャー」への寄稿などを通じて欧米で有名になり、帰国後は和歌山県に戻って研究を続けた。東京朝日新聞社に入社した楚人冠は1909年、日本では無名だった熊楠をいち早く紹介し、「世界的の大学者」と表現した。
 当時、政府は各地の神社を合併整理する神社合祀を進めていたが、熊楠は鎮守の森もなくなってしまうと反対運動を展開。楚人冠は中央紙としては真っ先に記事で取り上げた。熊楠の投書を掲載しようともしたが、文章が長すぎたため、代わりにその主張を元に記事を書いたりもした。
 同館の高木大祐学芸員は「いち早くエコロジーに着目した熊楠の見識と、社会活動を支援した楚人冠の先進性が結びついた経緯が書簡から読み取れる」と解説する。
 反対運動で自然が守られた同県田辺町(現・田辺市)の神島(かしま)を29年、昭和天皇が視察、熊楠はご進講をした。これに先だって2人の間で取り交わされた手紙も展示されている。
 展示は来年1月8日まで(最終日を除く月曜と今月29日~1月3日休館)。一般300円、高校・大学生200円、中学生以下無料。問い合わせは同館(04・7182・8578)へ。

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