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絶滅危惧種、横浜ですくすく ヘサキリクガメ、2年連続孵化成功 野毛山動物園

 絶滅危惧種のヘサキリクガメを国内で唯一、飼育している野毛山動物園(横浜市西区)で、2年連続の孵化(ふか)に世界で初めて成功し、子ガメたちのよちよちと動く姿が訪れる人たちを楽しませている。もともとは密輸されて国内で違法に飼育されていたのを保護し、産んだ卵を飼育員が手探りで温めてきた。
 ヘサキリクガメは、アフリカのマダガスカルが原産。のどの下の甲羅(喉甲板〈こうこうばん〉)が、船の舳先(へさき)のように伸びているのが特徴だ。1970年代に森林伐採などで生息数が激減。自然団体が保護していたが、96年に大量に盗まれて各国に密輸されたという。
 日本国内で違法に飼育されていたのを、2004年に警察が押収し、野毛山動物園に初めてやってきた。当時、飼育を担当した桐生大輔さん(47)は、辞書を引きながら海外の雑誌や論文を読んで勉強。マダガスカルの気候に合わせて温度や湿度を調節するなど、手探りで飼育方法を確立した。
 11年にも、ペットショップで販売されていたのを警察に摘発され、オスとメスの2匹を野毛山動物園で引き取った。そのメスが産卵し、16年に孵化に成功。3匹の子ガメが誕生した。ハワイのホノルル動物園で孵化して以来、世界でも約30年ぶりだった(うち1匹は今年11月に死んだ)。
 卵を温める孵卵器は、桐生さんの手作りだ。ガラスの引き戸が付いた食器棚を改造。取り付けた電球の熱で、水に浸した炭の水分を気化させ、中の湿度を70%前後に保てるよう工夫した。「今までやってきたことが実ったんだと、うれしかった」と桐生さん。今年8月にも1匹が孵化。2年連続は世界でも例がないという。現在も、1個の卵が孵卵器の中で温められている。
 子ガメたちは現在、公開されている(体調により非公開の日も)。親ガメに育つまでには20年かかるほど成長が遅く、現在の体長は5センチほど。エサを探してコロコロと歩き回る様子がかわいらしい。現在の飼育担当の大滝侑介さん(29)は「保全活動はまずは興味を持ってもらうことから。多くの人に関心を持ってもらえたらうれしい」。

 

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