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ハムシは共生細菌の酵素の助けで葉を消化

産業技術総合研究所はドイツ・マックスプランク研究所などと協力して、アザミの葉を食害するアオカメノコハムシの消化管に付随する共生器官中の細胞外共生細菌であるスタメラの全ゲノム配列を決定し、スタメラが植物の細胞壁の主要構成成分の一つであるペクチンを分解する酵素の生産に特化した極めて小さいゲノムをもつことを解明した。アオカメノコハムシの幼虫から共生細菌を除去したところ、体内のペクチン分解酵素の活性が著しく低下し、幼虫の成長や生存が阻害された。植物細胞はセルロース、ヘミセルロース、ペクチンなどの細胞壁多糖類が複合した丈夫な細胞壁で囲まれているが、最も可溶性の高いペクチンを、共生細菌の酵素の助けにより分解して、効率的に植物細胞を破壊して栄養源として利用していると考えられる。

 

従来、シロアリなどの腸内共生微生物によるセルロース分解が木質の消化に関わることは知られていた。ハムシ類は植物の葉を食べることに特化した甲虫のグループであるが、その共生細菌については、1930年代のドイツのスタメル(Hans-Jürgen Stammer)の顕微鏡観察による先駆的な報告以来、ほとんど研究が進んでいなかった。今回、共生細菌によるペクチン消化が生きた植物組織の利用に重要な役割を果たすことを初めて明らかにした。ハムシ類は多くの農業害虫を含むため、植物消化機構を標的とした新たな害虫防除法の開発につながる可能性も期待される。

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