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学名にaomoriのコケ、62年ぶり県内で確認 絶滅危惧「ササオカゴケ」/青森県

 県内で採集された標本がもとになって学名に「アオモリ」が付きながら、この60年余り県内で報告がなかったササオカゴケを「津軽植物の会」(木村啓会長)の会員たちが見つけた。環境省の絶滅危惧1類に指定され、全国的にも貴重なコケだけに、会員たちは「生息が確認されてよかった」と喜んでいる。

 ササオカゴケは、明治から大正初めにかけて県内で活動し、植物学者でもあったフランス人のフォーリー神父が青森市内で採集。その標本に基づいて、1904(明治37)年に「Hypnum aomoriense」という学名となった。後に日本の研究者によって分類が変更され、別の学名が付けられたが、「アオモリ」は学名の一部として残っている。
 ただ、県内で生息の報告があったのは54年が最後。青森の他に本州と九州の13府県で確認されているものの、県が2010年に発行したレッドデータブックでは県内での「現況は不明」となっていた。
 こうした中、津軽植物の会会員の澤田満さん(71)が3年前、茨城県のコケ研究者から同県内で新たにササオカゴケを発見したことを聞かされた。そこで同じような環境を県内で探していたところ、昨秋、澤田さんら3人の会員がつがる市と青森市の休耕田5カ所で見つけた。澤田さんは「顕微鏡でササオカゴケと確認した時は跳び上がるほどうれしかった」と話す。
 ササオカゴケはヨシなどが覆い茂って光が届かないと生息できないといい、今回見つけた休耕田は運良く草が刈り取られていた。澤田さんは「5カ所のうち1カ所は、雄株と雌株が交じって生息している極めて珍しい場所で貴重だ。休耕田は宅地造成などで埋め立てられる可能性があり、いつ消えてもおかしくない」と保全を訴えている。
 発見の経緯は、12月に刊行される日本蘚苔(せんたい)類学会の学会誌に掲載される予定。

 ■コケの生態を伝える写真展 11月30日まで
 澤田さんが撮影したコケの写真展「森林(もり)は大きなテラリウム」が、青森市柳川2丁目の市森林博物館で開かれている。コケの引いた写真と接写した写真を組み合わせ、遠目にはわからなくても実は多彩な表情を持つコケの写真や実物約150点が展示されている。
 写真はここ3、4年の間に撮りためたもの。「最近はコケブームだが、一般の人にはまだなじみが薄いので、写真を見て興味を持ってもらえれば」と話している。展示は30日まで。

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