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ギンリョウソウ、ショウキラン、キヨスミウツボの種子散布にカマドウマが貢献

ギンリョウソウ、ショウキランおよびキヨスミウツボという光合成をやめた寄生植物3種が、直翅目昆虫(バッタの仲間)のカマドウマに種子を運んでもらっていることを、神戸大学大学院理学研究科の末次健司特命講師が明らかにした。

寄生植物の種子は非常に小さく、埃のように風で舞うことで散布されると考えられてきた。しかし、寄生植物の中でも光合成をやめた植物の生育環境は日光の届かない暗い林床であり、風通しが非常に悪いため、風に種子散布を頼るのは非効率的だと考えられた。そこで静岡県富士市で、ギンリョウソウ、ショウキランおよびキヨスミウツボの3種を観察し、種子を運ぶ動物を調べた。その結果、鳥類や哺乳類はこれら植物の果実には関心を示さず、カマドウマ類 (クラズミウマとマダラカマドウマ) を中心とした無脊椎動物が、頻繁にこれらの果実を食べていることがわかった 。さらに、これらのカマドウマ類を捕まえて、糞の中には生存能力のある種子が大量に含まれていることを突き止めた。カマドウマがこれらの植物の種子を散布していることを意味し、このようなバッタの仲間による種子散布の例は、地上生活性の哺乳類がいる地域においては世界で初めての発見だ(地上生活性の哺乳類がいないニュージーランドでは報告がある)。

これまで昆虫の仲間が動物被食散布の種子の運び手とみなされなかった要因の一つとして、体が小さく、大あごのサイズも小さいため、種子をかみ砕いてしまうと考えられてきたことが挙げられる。しかし、光合成をやめた植物の種子は極めて微細なため、大あごでかみ砕かれることなく、無傷で排出されることが可能だったようだ。

ギンリョウソウ、ショウキランおよびキヨスミウツボは、それぞれツツジ科、ラン科およびハマウツボ科に属する。これらは非常に離れたグループの植物であり、それぞれが独自に光合成をやめるという進化を遂げ、昆虫に種子散布を託すという進化をも、それぞれ独自に遂げたことになる。

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