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ハランの花、キノコに擬態し虫を誘惑

「世界で最も変わった花」と称されてきた常緑多年草、ハラン(キジカクシ科)の生態を自生地である鹿児島県三島村黒島で調査し、キノコバエと呼ばれるハエ類の仲間に花粉の媒介を託していることを、神戸大学と森林総合研究所のグループが明らかにした。ハランは、薄くて硬く、つやがあり、深緑色をした巨大な葉を地表に伸ばす。この葉は、和食料理の盛りつけの際、飾りとして使われていたので、見た人もあるだろう。一方、花は紫色で多肉質であり、地面にめり込んだような格好で咲く。地上すれすれに咲く花はキノコに似ていると指摘されており、実際に花へ訪れていたキノコバエ類は、いずれも幼虫がキノコを食べる種だった。ハランの奇妙な花姿は、キノコに擬態することでキノコバエ類をだまし、花粉を運ばせる戦略である可能性が示唆された。

 

グループは、ハランの花に訪れる動物を、自生地である黒島において、2年間にわたり昼夜を問わず観察した。その結果、キノコバエ類が素早く花の内部に潜り込み、大量の花粉を体につけて飛び去ることを確認した。またハランの花に着地した段階で、すでに前の花に訪れた時につけた花粉を付けたキノコバエも見られた。そのようなキノコバエが訪れたハランの花を、後日、観察すると確かに結実していた。これらの観察から、キノコバエ類は有効な花粉の運び手であると考えられた。

 

これまでハランの花粉は、ナメクジやヨコエビなどの土壌動物によって運ばれると考えられており、そうした送粉形態が他にほとんど例がないことから「世界で最も変わった花」と呼ばれていた。一方、キノコバエ類に受粉を託す植物は、他にも存在している。「世界で最も変わった花」と言われていたハランも、実際はそこまで風変わりではなかったと言えるかもしれない

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