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市民撮影の写真から、マルハナバチ6種の分布を推定

マルハナバチ類は、野生植物や農作物の重要な送粉者だが、世界的に減少傾向にあるため、日本でもきちんとした分布調査が必要となっている。東北大学の研究グループは、山形大学と共同で、ウェブページやフェイスブック、ツイッターでマルハナバチの写真を撮影してメールで送ってもらえるよう市民に呼びかけ、2013年から3年間で4000枚を超える写真の収集に成功した。その結果、写真をもとに作成したマルハナバチ類の分布データと環境データを使用し、種分布モデルにより主要なマルハナバチ6種の生息地の推定に成功した。今後は過去と未来の生息地を推定し、現在の生息地と比較することで、生息地の縮小/拡大を評価し、保全すべき種や地域個体群の選定を行うことができるようになる。この成果は、Scientific Reports誌に発表された。

 

通常、全国的な生物の分布調査は膨大な時間・労力・人員が必要であり、個人で行うのは困難だ。そこで、近年注目されている市民参加型調査に着目し、市民ボランティアから写真を収集して、写真の映像から種名を、写真に記録されているGPSデータまたはメールのテキストに書かれた撮影場所の住所から位置を特定し、マルハナバチ類の分布データを作成した。これにより2015年までに日本に生息する16種のうち15種の写真の収集に成功し(2016年には残り1種も収集成功)、限られた地域や高標高に生息する種や亜種の分布データを含む、広範囲で大量な分布データを作成した。

 

この分布データと環境データを使用して、種分布モデル(MaxEnt)により、日本で主要だと考えられるマルハナバチ6種(トラマルハナバチ・コマルハナバチ・オオマルハナバチ・クロマルハナバチ・ミヤママルハナバチ・ヒメマルハナバチ)の生息地を推定。その結果、トラマルハナバチの生息地は広く、高標高に生息するミヤママルハナバチやヒメマルハナバチの生息地は狭いことが確認できた。6種の生息に適する気温や標高の組み合わせは異なり、さらに、トラマルハナバチ、コマルハナバチ、オオマルハナバチ、クロマルハナバチの4種は、森林が30%から75%ほど面積を占める場所が生息に適していると推定された。これは、マルハナバチが林縁を好むこと、また、これら4種の生息には伝統的な里山環境(森林と田畑や居住地などのモザイク)が適していることを反映している。従って、里山環境の適切な維持管理が、これら4種の保全につながると考えられた。

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