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資源作物「エリアンサス」で地域自給燃料を事業化

温室効果ガス排出削減のため、資源作物から作られるバイオ燃料の利用が期待されている。国際農林水産業研究センター(以下、JIRCAS)などは、食料生産と競合せず、収量が高く低コストで栽培できる作物としてイネ科の多年草「エリアンサス」に注目。育成した品種「JES1」を用いて、栃木県さくら市内の(株)タカノが耕作放棄地でのエリアンサスの栽培、ペレット燃料への加工を行い、それを市営の温泉施設で利用する仕組みを作った。今年4月から本格稼働を始め、これまでに燃料の地域自給が達成されていることを確認した。これはエリアンサスを地域自給燃料として事業化した世界初の事例で、国内では東北南部の低標高地から九州までの非積雪地に適用できるという。 事業化に当たっては、JIRCASがタカノにエリアンサス「JES1」種子を提供。タカノは、さくら市内の耕作放棄地(2017年7月現在、8ha)でエリアンサスを栽培して、ペレット燃料に加工して販売。さくら市は「市営もとゆ温泉」にバイオマスペレットボイラを配備し、シャワー用熱源としてペレット燃料を使用した。もとゆ温泉で必要なペレット燃料(計画数量)は年間約210tで、2017年はおよそ半量をエリアンサス、残りは木質原料(伐採木)で賄うが、今後はエリアンサス生産圃場を20haに拡大し、全量をエリアンサスとする予定。

 

ペレットボイラ導入前の灯油消費量は年間102klで、灯油の燃焼による二酸化炭素排出量は約255tだった。ペレット燃料210tの燃焼による二酸化炭素排出量は約363tだが、バイオマスの燃焼時に発生する二酸化炭素量は、原料となる植物の光合成により大気中から取り込んだ二酸化炭素量と相殺される(カーボンニュートラル)。エリアンサスは播種から実用的な収穫開始まで3~4年を要するが、植え替えることなく10年以上毎年収穫が可能であるため、農地における原料の計画生産が可能だ。

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