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気候変動によりマツ材線虫病の危険域は世界的に拡大する
- 2017/09/11
- 森林総合研究所研究成果
日本のマツ林に深刻な被害をもたらしてきたマツ材線虫病(以下、マツ枯れ)は、東アジアや西ヨーロッパでも深刻な被害をもたらしている。マツ枯れの発生は気温と密接な関係があることから、気候変動による被害域の北方への拡大が懸念される。また、気候変動によって気候条件がマツの分布に適さなくなる地域では、マツ枯れに対する脆弱性がより高まる可能性がある。そこで、マツ枯れ抵抗性が低い世界の感受性マツ21種の天然分布域を対象に、現在および将来の気候変動シナリオ下でのマツ枯れ危険域と、気候条件がマツにとって適さない地域を推定した。
その結果、現在の気候条件では、東アジアや南ヨーロッパのマツ分布域が危険域として判定され、現にこれらの危険域の多くで、すでにマツ枯れが発生していた。また、気候変動に伴って、危険域は東ヨーロッパや中央アジア、極東ロシアにまで拡大すると予測された。将来の気温上昇量が大きい気候変動シナリオ下では、危険域は感受性マツ天然分布域の50%にまで拡大し、しかもその約40%はマツの分布に適さない気候条件になってしまう可能性が示された。気候変動が進行した場合には、現在より北方の地域でもマツ枯れ対策が必要になる可能性がある。この成果はPLoS ONE誌に掲載された。